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「1年目でボコボコにされてよかった」出雲の覇者・國學院大エース平林清澄のリベンジとどん欲なる野望…3冠へ「あと2本、勝ちに行きます」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byNanae Suzuki
posted2024/10/16 17:30
出雲3度目のアンカーでついに優勝。日本一高い? 胴上げで宙を舞う國學院大・平林
一方、充実感を漂わせる前田監督は、大黒柱への信頼をあらためて口にした。
「篠原君としては、勝てると思っていたはず。だから、(風よけになり、表情が見えない)後ろにつかず、横に並んだのかなと。でも、思いのほか、平林が強かった。実力を見誤ったのかもしれませんね。平林にはスタミナ勝負に持ち込んだ賢さ、マネジメント力、度胸があります。スピードがないと言われることもあったけど、4年間かけてつくってきましたから。いまは1年目で見せた、ラストに弱いランナーではないので」
1年目からボコボコにされてよかった
本人も1年時の出雲路は、ずっと胸に刻んでいる。タイムだけを見ると、ルーキーながら6区で区間5位と健闘したものの、悔しさばかりが残る。チーム順位を3位から4位に落とし、わずか4秒差で表彰台を逃したのだ。3年目は満を持してアンカーを務め、出雲ドームで涙を流している。優勝した駒澤大の鈴木芽吹(現トヨタ自動車)に力の差を見せつけられ、2位・城西大の背中も遠かった。
「いま振り返れば、1年目からボコボコにされてよかった。2度のアンカー経験が生きたのかなと。キャプテンとして勝てたのは、本当によかった」
出雲駅伝には特別な思いもある。2019年10月、國學院大の主将がアンカー区間で駒澤大の駅伝主将を振り切り、初優勝した場面は鮮明に覚えている。画面越しに土方英和(現旭化成)のラストスパートを見たときには鳥肌が立った。それ以来、福井の美方高校に通う2年生は國學院大を羨望の眼差しで見るようになり、縁あって進学を決めたのだ。
土方へのリスペクトは強く、いまも普段のジョグはOBが走り続けたコースで汗を流す。いつか先輩のように優勝テープを切りたいと思い続けて4年――。感慨深そうに記憶をたどっていた。