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「1年目でボコボコにされてよかった」出雲の覇者・國學院大エース平林清澄のリベンジとどん欲なる野望…3冠へ「あと2本、勝ちに行きます」
posted2024/10/16 17:30
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Nanae Suzuki
フィニッシュ地点の出雲ドーム前は、“赤紫”の熱気に包まれていた。主将を待ち構える國學院大学のチームメイトたちが「バヤシ」コールを送るなか、駒澤大とのアンカー対決を制した平林清澄は4年分のうっ憤を晴らすような雄叫びを上げる。
勝利を噛みしめながら両手を広げてフィニッシュテープを切ると、勢いそのままに前田康弘監督と仲間たちの輪に飛び込んだ。出雲駅伝は5年ぶり2度目の優勝。手荒い祝福を受けてもみくちゃにされ、歓喜の胴上げが始まった。3回宙に舞った痩身のキャプテンは、興奮冷めやらぬ口ぶりで喜びを口にした。
「めっちゃ良い光景でしたね。ぱっと、目の前が開けて、優勝の景色が見えました。日本で一番、胴上げで高く飛んだと思いますよ」
駒澤・篠原との勝負は想定内
冗談交じりに笑うが、その体は他の誰よりも引き締まっている。食事を含めた生活面から自らを厳しく律し、身長167cmで体重43kg。体脂肪率は3%台をキープする。テレビの優勝インタビューを終えてお立ち台から降りた途端、小さな体は雑然とする会場のなかに埋もれたが、「キヨト、おめでとう」という声にはすぐに反応した。故郷の福井県から父親の清一さんも駆けつけていた。ごった返す観客をかき分けて熱い抱擁をかわし、短く言葉を交わす。「オトン、これはうれしいよ。これはうれしい。何回、後ろを見たかわからん」。かつて全国高校駅伝に出場し、エース区間の1区で前田監督と競った経験を持つ父親もハラハラしていたようだ。
「いつ仕掛けるかと思ったわ」
平林はふっと笑みを浮かべて父親のそばをすっと離れ、取材陣に勝負所を話してくれた。3年生の上原琉翔から先頭で襷をもらった時点で3位の青山学院大とは24秒差、2位の駒澤大は4秒差。藤色のエース、篠原倖太朗(4年)が後ろから追いついてくるのは想定内だったという。