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「1年目でボコボコにされてよかった」出雲の覇者・國學院大エース平林清澄のリベンジとどん欲なる野望…3冠へ「あと2本、勝ちに行きます」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byNanae Suzuki

posted2024/10/16 17:30

「1年目でボコボコにされてよかった」出雲の覇者・國學院大エース平林清澄のリベンジとどん欲なる野望…3冠へ「あと2本、勝ちに行きます」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

出雲3度目のアンカーでついに優勝。日本一高い? 胴上げで宙を舞う國學院大・平林

「戦いはそこからだな、と。ずっと並走してきて、どちらも譲れない状況でした。(5km過ぎの)浜山(公園)の上りは自分のアクセント。昨年も4km地点からギアが変わる感覚はありましたから。あのとき、篠原君が後ろに下がったので、ここは自分で行くしかないと思ったんです。10kmの距離は得意ではないけど、今回は(1km)2分51秒ペースがはまりました」

 6区の距離は10.2km。トラック10000mの自己ベストは篠原が27分35秒05、平林は27分55秒15。スピードがものを言うラスト勝負になると、分が悪くなるのはわかっていた。あらかじめ、仕掛けるポイントを決めていたのだ。中盤から持ち前のスタミナを生かす。苦しい表情の篠原を置き去りにすると、ぐんぐんと最後まで突き進んだ。

マラソンの経験が生きた

「大阪マラソンと一緒です」とにんまり。今年2月、初マラソン日本最高記録、日本学生記録となる2時間6分18秒をマークし、実業団の選手たちを抑えて優勝を飾り大きな自信をつけた。中盤から終盤にかけての快走は、「駅伝でもマラソンの経験が生きてくる」と話していたとおりである。区間2位の工藤慎作(早稲田大)に32秒差をつける、文句なしの区間賞で優勝に華を添えた。

 勝負のアヤは、主将のエース対決となった“並走”にもあった。敵将の藤田敦史監督は、苦虫を噛み潰したような顔で回想する。

「篠原は勝負に徹することができなかった。走り始めから表情がきつそうでした。余裕がないように見えたので一度下がればよかったけど、プライドがあって並んでしまった。それを平林君に察知されたんでしょうね」

「きょうは、お前は強かった」

 指導者として学生駅伝で通算27度の優勝経験を持つ駒大の大八木弘明総監督は表彰式後、ばったり平林と顔を合わせると、渋い表情で握手をかわし、その走りを称えていた。

「あそこで勝負したから、お前は勝てたんだ。きょうは、お前は強かった」

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