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「西武1位は“まさか”の野手ではなく…?」「中日2位は“颯爽と現れた”地元の高卒スラッガー」ドラフト全指名予想《西武・中日・オリ編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/10/23 11:20
ドラフト目玉候補の中村優斗投手(愛知工大・176cm83kg)
智弁学園、大阪商業大、NTT西日本と各カテゴリーのトップチームでエース格として投げ、高い経験値と実戦力なら伊原陵人(投手・NTT西日本)だ。実は、繰り上げ1位の徳山一翔が、そこでも重複して逸したら、この投手を繰り上げるつもりだった。ロッテ、横浜DeNAあたりの繰り上げ1位指名も、すごく心配していた。
小柄だが、体の開きをギリギリまで我慢するフォームだから、球筋に角度があり、先発で試合後半まで145キロ前後をマークして、ミットへの当たりの強烈な速球に空振りを奪えるカットボールとスプリット。春の開幕から働ける左腕だ。
3位指名が、どうして「遊撃手」の島袋皓平(東北福祉大)なのか? ジャパンメンバーの紅林弘太郎がレギュラーに君臨して、昨年の1位指名も横山聖哉遊撃手(上田西高)だったじゃないか。そんな声も聞こえてくる。
いいんだ。プロが注目するほどの遊撃手は、間違いなく野球センスと身体能力の塊。島袋選手もその例外ではない。昨年秋のリーグ戦、本塁打王、打点王に、リーグMVPまで獲得と独壇場の活躍。プロに進もうという選手には、こうした「爆発力」が必要だ。上位指名でなければ社会人志望ということもありこの順位になった。
中日か西武に、3位か折り返しの4位で絶対獲られるとあきらめていた正林輝大(外野手・神村学園高)が指名できた!
元広島の大打者・前田智徳選手に通ずるバットコントロールとスイングスピード。「天才」に近い。今夏の甲子園では何か心配事でもあるのか、もう一つプレーに集中できないようで苦しんでいたが、昨夏の甲子園で抜群のジャストミート能力を確認しているから問題なし。ちなみに、足、肩、守備力は前田選手をしのぐレベルと思われる。
オリのお家芸、下位指名の「社会人探し」
5位・宮崎竜成(二塁手・ヤマハ)、6位・竹田祐(投手・三菱重工West)。さあ、今年もオリックスのお家芸「社会人探し」だ。投手で阿部翔太(2020年6位)、小木田敦也(2021年7位)、高島泰都(2023年5位)、古田島成龍(2023年6位)。野手なら、西野真弘(2014年7位)、山足達也(2017年8位)、小田裕也(2014年8位)に「ラオウ」こと杉本裕太郎(2015年10位)。地味な存在でも実戦力の高い社会人野球の選手を下位で指名して、貴重な戦力にしてきた「手腕」は、オリックススカウト陣の誇りとも言えよう。
パンチ力抜群の広角打法に俊足、そして堅実な守備ワークの宮崎竜成は、ベンチに置いておけば、一人何役もこなす。社会人3年目、満を持してのプロ入りとなる竹田祐は、履正社高→明治大とハイレベルでの経験値が高く、145キロ前後の速球にカットボール、カーブ、フォークなど多彩な変化球を交えて、力を押すことも、打者のタイミングを外すこともできる。来年の今ごろ、6勝、7勝しているかもしれない。とても「6位」の実戦力じゃない。
そして、もう1人社会人か……と思われた7位指名で、オリックスは高校生を挙げてきた。
西川歩(投手・山村学園)は鋭い角度のクロスファイアーとスライダー、チェンジアップで折り目正しい投球のできる左腕だ。捕手が構えたミットに70%前後の高い「コントロール率」できめて、ここ一番の場面ではキバをむける。左腕エース・宮城大弥をお手本にできるオリックスは、うってつけの環境に違いない。
<ヤクルト・楽天・広島編へ続く>