昨年夏の甲子園大会、2年生ですでにその豪快な腕の振りに非凡な将来性を漂わせ、今夏の栃木県予選で1試合19奪三振完封の堀江正太郎。長い手足をしならせるように投げる平塚大記には、体重10キロアップの暁には常時150キロが見込め、内山京介の雄大な体躯とエンジンの大きさは、それ自体が豊かな将来性だ。

　5位・椎木卿五（捕手・横浜高）は、父親が一時、中日で捕手をつとめていたことがあり、今回もご縁があったが、それが理由の「縁故指名」では決してない。

　弾丸ライナーで、アッという間に左翼スタンドに持っていくパワーバッティングは、「金属だから」と軽視できない。打ってホームランや長打になりそうなボールなら、初球から渾身のフルスイング。言うほど簡単にできることじゃない。もくろみとしては当然、右の長距離砲。横浜高の先輩・福田永将（元外野手、現・二軍打撃コーチ）を超えて、平成の本塁打砲「山﨑武司」だ。

オリックスは即戦力のバットマンを狙うも…

【オリックス・バファローズ　2024年ひとりドラフト指名選手】

✕西川史礁　21歳　外野手　青山学院大  　182cm83kg　　右投右打
（楽天との抽選に敗れる）
1位　徳山一翔　22歳　投手　環太平洋大　　  176cm85kg　左投左打
2位　伊原陵人　24歳　投手　NTT西日本　　170cm75kg　左投左打
3位　島袋皓平　22歳　遊撃手　東北福祉大　　182cm77kg　右投右打
4位　正林輝大　18歳　外野手　神村学園高　　179cm83kg  右投左打
5位　宮崎竜成　23歳　二塁手　ヤマハ　　　　173cm85kg　右投左打
6位　竹田祐　25歳　投手　三菱重工West　　184cm90kg　右投右打
7位　西川歩　17歳　投手　山村学園高　　　173cm73kg  左投左打

【オリックス総評】

　中嶋聡監督の電撃辞任には、ちょっと驚いた。

　ご自身は「私の責任のとり方」とおっしゃったが、あまりにも潔すぎるというのか、勿体なさすぎるというのか。本当はもっとあれこれ、これからのプランがあったのではないのか。体調に懸念があっての辞任でないことだけお祈りしたい。

　岸田護新監督のビジョンもあまりわからないまま、今季の戦いぶりに照らし合わせてのドラフト指名となった。

　近い将来、クリーンアップを見込めそうなイキのよい若手のバットマンが欲しい。だから当然、1位入札は西川史礁（外野手・青山学院大）だったのだが、この日の運気はわずかに「楽天」が上回った。

繰り上げ1位は一転、隠れた実力派「投手」

　そうしたタイプの「1位相当」は今年、彼しかいない。その判断が「投手」への方向転換となって、繰り上げ1位は「名より実」で実力派左腕・徳山一翔（投手・環太平洋大）だ。

「誰？」という声が聞こえてくる。岡山の大学で一般に知名度は低いかもしれないが、野球では全国大会のご常連。長く指揮を執る野村昭彦監督は、広島カープの名遊撃手で監督もつとめた野村謙二郎氏の弟さんにあたる。

　さて、徳山投手だ。最速153キロ、アベレージ140キロ台前半の速球に鋭いスライダー、チェンジアップを武器に、最大の長所は大舞台でのピンチの場面ほどファイティングスピリットほとばしる勝負根性だ。

　オリックスの左腕はエース・宮城大弥に田嶋大樹、今季は2年目・曽谷龍平も成長（7勝11敗・防御率2．34）したが、左腕は何人いてもよいし、リリーフ陣に左腕がいないことはずっと頭痛の種だった。そこに、ピンチほどギアを上げて決然と勝負を挑める左腕。岸田新監督にはまたとないプレゼントではなかったか。

　ならばこの際、リリーフ適役左腕をもう一枚、補強しておこう。

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