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「スピード練習? 全くやってないです。ウチは駅伝なんで」青学大“遅れてきたエース”の出雲区間賞で感じたそれでも“箱根駅伝の本命は青学”のワケ
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byNanae Suzuki
posted2024/10/14 17:36
出雲駅伝1区で区間賞を獲得した青学大4年の鶴川正也。故障に苦しんだ3年間だが、4年目でその素質が開花した
それほどの安定感と勝負強さを見せていた鶴川だが、大学入学後は苦しんだ。
度重なる故障に悩まされ、大学長距離界最大の晴れ舞台である箱根駅伝はこれまで一度も走ることができていない。出雲路でも、ようやく初出走となった昨年はアンカーの6区で区間7位と失速していた。
「これまで3年間がうまくいかなすぎて……でも、その経験がすごく活きていて。最近、本当に思うんですけど、やっぱり走れていることってこんなに幸せで、当たり前のことじゃないんだなと」
「陸上競技って、メンタル面が半分以上」
鶴川は明るく、ノリも良く、話も上手い。もう少し誤解を恐れずに言えば、適度に“チャラい”。良くも悪くも「青学らしい」選手だ。そんなキャラクターだからこそ、前述の日本選手権のレース後に語った言葉には、大学で3年間苦しみ続けた鶴川の想いがあふれていた。
「やっぱりトレーニングだけじゃない。陸上競技って、メンタル面が半分以上なんだと思います。一見、関係ないように見えるんですけど、ちゃんと学校で勉強して、ちゃんと寝て、色んな誘惑に惑わされず、日々ちゃんと生活する。最近はそういうことが一番、メンタルの強さに繋がっていくんだと実感しています」
期待の“ドラ1”ルーキーとして期待されて入学しながら、3年間以上も雌伏の時を過ごすのは想像を絶する苦しさだったはずだ。それでも腐らず、周囲への感謝を再確認しながら、最後の駅伝シーズンで復活してみせたメンタリティは特筆に値するだろう。
結果的にチームは出雲路での戴冠はならなかった。それでも鶴川のような“遅れてきたエース”が、ようやく駅伝でもその潜在能力を発揮してみせた。当然、虎視眈々と今後のレースでの活躍も窺っているはずだ。本人もこう語っていた。