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久保凛16歳“陸上界の新ヒロイン”が国スポで39年ぶり大会新…本人が語った今季“覚醒のキッカケ”「憧れの田中希実選手に勝つことができて…」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by(L)Asami Enomoto、(R)Ai Hirano
posted2024/10/12 17:00
国スポを40年ぶりの大会新で圧勝した16歳の久保凛。今季は日本新記録の樹立や日本選手権優勝など、一躍日本のトップに躍り出た
心身ともにグンと成長する高校生が急激にタイムを短縮するのは珍しいことではない。だが、久保は22年の全中チャンピオンで、すでに国内の800mランナーとしてトップレベルの域に達していた。それでも、いとも簡単に目の前の壁を越えていった。
その要因を久保自身はこう語る。
「冬にしっかり練習を積んで、春のトラックシーズンを迎えて、その中で1500mのタイムも去年よりだいぶ伸びたんです。持久力がついて、スピード自体も自分の中では去年よりも速く走れていましたから、レベルを上げた練習を積めていたということだと思います」
800mのレースは「スピード」と「持久力」の両輪で戦う。前半はスピードでリズムを作り、2周目の最後の直線でさらにギアを上げられるか、失速するかが勝負の分かれ目になる。つまり、ラストでいかに踏ん張れるかがカギを握り、スピードと持久力を“調合”した「スピード持久力」がモノを言う。
久保自身が持ち味だというスピードに加え、より距離の長い1500mのレースを重ね、耐える力を鍛えたことでスピード持久力が全体的に底上げされ、今季の躍進に結びついている。
大躍進の1年…そのキッカケのレースとは?
また、精神面で自信をつけたことも大きい。
久保にとって今季、ターニングポイントになったレースがあるという。
「最初の金栗記念の時、初めてシニアの方と走らせていただきました。憧れの田中希実選手に勝つことができたのと、グランプリで1位になることができたのが自信になりました。そこから流れに乗れましたね」
4月13日の金栗記念選抜中長距離大会(熊本・えがお健康スタジアム)では、21年東京五輪1500m、5000m日本代表の田中希実(New Balance)と初対戦。積極的に序盤から先頭で引っ張った。2周目に入った直後。ギアを上げた田中に抜かれた時、一瞬、怯んだ。
「スピード感覚がすごく速かったんです」