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久保凛16歳“陸上界の新ヒロイン”が国スポで39年ぶり大会新…本人が語った今季“覚醒のキッカケ”「憧れの田中希実選手に勝つことができて…」 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph by(L)Asami Enomoto、(R)Ai Hirano

posted2024/10/12 17:00

久保凛16歳“陸上界の新ヒロイン”が国スポで39年ぶり大会新…本人が語った今季“覚醒のキッカケ”「憧れの田中希実選手に勝つことができて…」<Number Web> photograph by (L)Asami Enomoto、(R)Ai Hirano

国スポを40年ぶりの大会新で圧勝した16歳の久保凛。今季は日本新記録の樹立や日本選手権優勝など、一躍日本のトップに躍り出た

 だが、そこから必死に食らいつく。

「憧れの選手だからこそ絶対に負けてはいけないと思っていました。だからついていけましたし、ラストの100mで粘って……」

 最後の直線でスパートして抜き返し、先頭でフィニッシュした。2分5秒35でグランプリシリーズを初優勝。出場選手でただ一人の高校生が、日本中距離の女王に逆転勝ち。ニューヒロインの誕生を予感させるレースは、日本陸上界に衝撃を与えた。

 久保の自信はレースを走るたびに揺るぎのない力に変わっていく。

 5月3日の静岡国際(エコパスタジアム)を2分3秒57で優勝し、同12日の木南道孝記念(大阪・ヤンマースタジアム長居)も2分5秒11で走って優勝。グランプリシリーズ3連勝で勢いをつけると、日本選手権で再び、田中希実に勝って頂点に立った。そのまま一気に流れに乗り、日本新記録を打ち立てた。

初の海外レースで感じた「逆境」

 その歩みは順調にも映るが、もちろん逆境もあった。

 8月末、初めての海外レースであるペルー・リマでのU-20世界選手権の女子800m。準決勝から決勝に向かう中で、トラブルを抱えた。慣れない環境で食べ物が合わなかったのか、胃腸の状態が悪いまま、試合に臨んでいたのだ。

 それでも、周りには体調不良であることはおくびにも出さない。準決勝では日本にいる時と同じように序盤から前でレースを進め、全体トップのタイムでフィニッシュ。東大阪大敬愛高で指導する野口雅嗣監督は感心したように振り返る。

「彼女はたとえ、ネガティブなことを考えていても口に出しません。準決勝までトップで来て、みんなが期待しているし、やらないといけない。だから笑顔を見せるんです」

 体調の悪さを打ち明けられ、その胸中を察した野口監督は決勝前、久保に伝えた。

「自分のレースをすればいいよ。楽しんでやりなさい」

 すると、電話越しに声が聞こえてきた。

「楽しんで、今の全力でやります!」

【次ページ】 目標は「日の丸を背負って活躍する選手に」

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