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核心にシュートを!BACK NUMBER
パリ五輪“あの”「誤審疑惑」を糧に…バスケ日本代表・富樫勇樹がBリーグ開幕戦で見せた“超判断”の価値「3Pを決められても『まだ同点だ』と…」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by(L)JMPA、(R)Kiichi Matsumoto
posted2024/10/10 18:56
世界中で話題となったバスケ日本代表「誤審騒動」。あの疑惑の判定を経て、Bリーグ開幕戦で富樫勇樹が見せた好判断とは?
結果的にニュービルは3Pシュートを沈め、ブレックスは土壇場で同点に追いついた。
試合後、あのシーンでの判断について富樫は丁寧に説明してくれた。
「もちろん体勢が少し違っていたら、ファウルをしていました。でも(ニュービルは)完全に顔を上げ、ワンドリブルから(シュートへ移行する)モーションに入っていたので。あそこで手を伸ばしたらフリースローになる可能性もあるなかで……ちょっと難しい判断ではありました」
「3Pを決められても負けることはない」…一瞬の判断
そう本人も振り返った場面だったが、コンマ数秒の間に頭の中では様々なケースを想定できていた。
「実は『3Pを決められても負けることはない。あくまで同点だ』という話“も”(タイムアウト中に)していたんです。それもあって、自分の中でしっかり冷静に判断できたのかなと思います」
結局、延長戦ではジェッツが優位に試合を進め、勝利をつかんだのだった。
富樫は以前から似たような場面では「絶対にファウルを取られない」と対外的にアピールするかのように、両手を後ろに回したまま、相手のシュートを“出来るだけ”邪魔するケースがあった。
ただ、前述のようにジェッツの選手たちには精神的なプレッシャーがかかるような試合だった。そして、前編で触れたように高いインテンシティで高レベルのプレーの応酬が見られた試合でもあった。
そんななかで、富樫があの一瞬での最適解を見つけ、実行したことは評価されるべきだろう。日本代表のレベルを上げるためには、技術、戦術、フィジカルなどと並んで、判断力も改善していかないといけないのだから。
そして——。思えば、日本代表が世界の舞台でさらに上に行くためにどうしたらよいのか考え、議論するきっかけを与えてくれたのがパリ五輪のあの厳しい判定だった。大きな注目を集める開幕戦で、日本国民のバスケリテラシーを上げてくれるような場面があり、富樫がその解を示してくれた。
「日常」の試合で、日本バスケ界は前に進んでいると感じられるシーンが見られたこと。そこにこそ、大きな希望が湧いてきた気がした。