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核心にシュートを!BACK NUMBER
パリ五輪“あの”「誤審疑惑」を糧に…バスケ日本代表・富樫勇樹がBリーグ開幕戦で見せた“超判断”の価値「3Pを決められても『まだ同点だ』と…」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by(L)JMPA、(R)Kiichi Matsumoto
posted2024/10/10 18:56
世界中で話題となったバスケ日本代表「誤審騒動」。あの疑惑の判定を経て、Bリーグ開幕戦で富樫勇樹が見せた好判断とは?
今シーズンの優勝候補筆頭である両チームの対戦で、ジェッツの新しい本拠地LaLa arena TOKYO-BAYでの最初のゲームだった。チケットは一般販売の前、ファンクラブ先行販売の段階で完売していた。9708名という観客動員数はBリーグのレギュラーシーズン史上3番目(※当時。翌日にジェッツ自身がさらに記録を更新した)で、ジェッツにとっては新記録だった。当然ながら、ホームの選手たちにとっても大きなプレッシャーのかかる試合だった。
そんな記念すべき開幕戦の残り6.7秒。ジェッツが3点リードした状況でブレックスがタイムアウトをとった。タイムアウト明けは、ブレックスボールで始まる状況だった。ジェッツのトレヴァー・グリーソンHCは、タイムアウトでの指示について、試合後にこう明かしている。
「『ファウルを有効に使おう』という話をしていました。そして、相手の(昨シーズンのMVPであるD.J.)ニュービル選手には3Pを簡単に打たせたくないという思いがあったんですが……」
あのような局面での定石は、ブレックスの選手がシュートモーションに入る前にファウルを使い、相手に残された時間を削ることだ(※ただし、チームの第4Qでのファウルが3つ以下の場合に限る。このときのジェッツのチームファウル数は3つだった)。当然ながら、グリーソンHCも最初にその指示はしていた。
ファウルをする? しない?…勝負所での富樫の判断
果たして、ブレックスのスローインからの攻撃では、予想通りにニュービルにボールを入れてきた。ただ、ニュービルのマークについた原修太が相手のスクリーンに引っ掛かり、次にプレッシャーをかける役割だったD.J.ホグも寄せきれなかった。そうした状況を受けて、富樫勇樹が少し遅れてプレッシャーをかけにいった。
ただ、タイミングが遅れていたため、富樫が間合いを詰めた時点で、ニュービルはすでに3Pシュートのモーションに入っていた。その状況でファウルをとられれば、ニュービルにはフリースローが与えられてしまう。もしフリースローまで決められれば、一気に逆転ということになる。
その状況で富樫はニュービルに近づきながらも、大げさなくらいに両手を後ろに回した。絶対にファウル判定をされないようにするためだ。直前のタイムアウトにおけるHCの指示は「ファウルを上手に使って残り時間を削ること」だったにもかかわらず、だ。