「1年目から一軍に帯同させてもらってきて感じるのは、プロ野球選手はどうしてもアスリート的なトレーニングが不足してしまうことです。ほぼ毎日試合でリカバリーも考えなくちゃいけないし、今までは若かったから大丈夫だろうってところもあったんですけど、やっぱりそれじゃ通用はしない。日々のトレーニングの大切さは先輩の森原さんの姿を間近で見て感じていましたし、このままじゃ駄目だなと思っていた矢先に抹消されたんで、そういう意味ではすがるような気持ちで、コーチやトレーナーさんと一緒に話し合いながら取り組んできました」

「準備100%」をモットーとするクローザー森原康平からの影響は大きい　©Kiichi Matsumoto

　一軍は優勝を目指して戦っており、またブルペン事情も厳しいこともあり焦る気持ちは当然あったが、ここは大事な時だと割り切り、伊勢は自分自身に集中した。

「早く戻らなくちゃという気持ちはありましたが、『自分のためにやってこい』と言われていましたし、今年は戻れなくてもいいってぐらいの覚悟で自分だけにフォーカスして、己の野球人生のために時間を費やしました」

体を根本的に作り直した

　トレーニングはハードで地道なものだったという。体を根本的に一から作り直す作業。主に下半身の動きが弱っていたので、筋量を増やすというよりも、キレを取り戻すトレーニングに終始した。

　そして夏の暑い盛り、イースタン・リーグで実戦復帰し10試合を投げ、防御率0.00という成績を残すと、8月13日に晴れて一軍登録された。およそ3カ月弱、これほど長期間、伊勢が近年一軍から離れたことはなかった。

　ミニキャンプによって体のベースはできたと実感できたが、一方でピッチング面で変わったという確証を得ることはできなかったという。

「やはりスピードが出ない。それでもファームでは打者に差し込めていたし、一軍で通用するレベルにはなっていたのかなって。自分の中では合格ラインではないんですけど、チーム状況もありましたし、ここは一軍で磨き上げないといけないと思いました。だから復帰最初の登板はものすごく緊張したんです。そこでしくじったら、またどんどん落ちていくと思ったので……」

　そして8月14日の広島戦（マツダスタジアム）、3対1でリードした2死二塁の場面でマウンドに立つと、堂林翔太を3球でサードゴロに切って取り留飲を下げた。

　以降伊勢は、セットアッパーとして再び存在感を示した。8月は6試合を投げ、2ホールド、防御率1.93。ただ、先に述べたようにピッチング面における確証を得られないままだったという。“なにか”が足りず、自分を取り戻し切れない。

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