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「こんな簡単なことだったんだ」どん底での苦闘の末にDeNA伊勢大夢26歳がたどり着いた「ひらめき」…CSに向け「今は確信を持てている」
posted2024/10/07 11:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
肝を冷やした瞬間だった。
10月1日の広島戦(横浜スタジアム)、3対1で迎えた8回表、マウンドに立った横浜DeNAベイスターズのセットアッパー・伊勢大夢は、先頭打者1人を抑えただけで緊急降板した。勝てばクライマックスシリーズ(CS)進出に王手が掛かる大事な試合であり、満身創痍のDeNAブルペンにあって伊勢の存在の大きさは計り知れない。
戦線離脱の可能性も脳裏をかすめたが、試合後に“背中の張り”と球団発表があり、大事に至らないと判明した。
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異変に気付いたのは、バッテリーを組んだベテラン捕手の戸柱恭孝だった。
「その日は、試合前からコミュニケーションを取っていても、どこか大夢らしくなかったんです。投球練習から疲れているのかなって感じて」
いつもとボールが違う
戸柱はそう言って当日のことを振り返る。伊勢は3日連続の3連投だった。異変を確信したのは、2球目に投じたフォークを受けた時だ。
「いつもの大夢の投げ方とボールの質が違う」
その後、ストレートだけで何とか打者を抑えると、戸柱はマウンドに向かい伊勢に問いかけ、確認をした。そして言葉を選び、チームはもちろん伊勢本人が大事に至らないことを願い、難しい判断だったが降板を促したという。
「本当、今後のチームのことを考えても大夢が欠けてしまったら痛いと思ったんで、あそこで本当に気づけて良かったなって。大夢も素直に受け入れてくれました」
普段から密にコミュニケーションを取っている両者だからこそ成立した危機管理。その後、試合は伊勢の後を受けたジョフレック・ディアス、そして9回を森原康平が抑え、チームは勝利した。伊勢はバックヤードで戸柱に「ありがとうございました」と頭を下げた。
マウンドに立って気づいた
伊勢は、あの日のことを振り返る。
「疲れは確かにあったのですが、これまでのようなボールが投げられないと気づいたのはマウンドに立ってからでした。ただ、そういった状況でこれまで何度も投げてきたので、何とかしのごうって。けど初球からボールが3つ続くことはなかったので、トバ(戸柱)さんが察してくれて……」
降板にあたり、仕事を全うできないもどかしさ、そして戸柱やブルペン陣への信頼など、心中複雑だったことを伊勢は吐露する。