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「こんな簡単なことだったんだ」どん底での苦闘の末にDeNA伊勢大夢26歳がたどり着いた「ひらめき」…CSに向け「今は確信を持てている」 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/10/07 11:00

「こんな簡単なことだったんだ」どん底での苦闘の末にDeNA伊勢大夢26歳がたどり着いた「ひらめき」…CSに向け「今は確信を持てている」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

1998年生まれの26歳。2019年ドラフト3位入団。九州学院高校ではヤクルト村上宗隆の2年先輩だった

「負けてはいけない試合だということはわかっていたし、CS進出に影響するかもしれないので、ブルペンの状況を考えても自分が投げなきゃいけないという気持ちは強かったです。ただ迷惑をかける可能性もあったので、そこは自分で判断したというか、仲間を信じることもリリーバーとしては大事なのかなって」

極度のスランプ

 ぎりぎりの判断と覚悟。身を削るようにしてチームに献身する、かくも厳しきリリーバーという役割。プロ5年目の伊勢は、この仕事のやりがいとハードさをよく知る投手だ。

 ルーキーイヤーからブルペン入りし、3年目の2022年シーズンにはセ・リーグ最多の71試合に登板し、防御率1.72に加え球団記録となる39ホールドをマーク。昨年も58試合に登板するなどチームにとっては、なくてはならないセットアッパーとして、その地位を確立している。

 だが、今季は振り返れば苦しいシーズンだった。開幕当初こそいいピッチングを続けていたが、5月24日の広島戦(横浜スタジアム)で2本塁打を浴び3失点すると、次の登板となった30日の楽天戦(横浜スタジアム)でも1アウトしか奪えず3失点を喫した。

「ガタガタッと来た感じでしたね……」

 この翌日、伊勢は一軍登録を抹消された。疲労もあったが、全身のバランスが悪い。なによりシュートライズする自慢のストレートが伸びず、球速が140キロ前後しか出なかった。

「スピードもそうだし、バッターにも反応されてしまう。変な話、ファームの若手選手たちにも前に飛ばされてしまう。経験上、外野まで飛ばないと思うボールが、ファウルにすらならずにヒットされてしまう。抑える術がどんどん狭くなるのを感じました」

 極度のスランプ。伊勢は首脳陣の判断もあり、ファームで実戦を重ねるのではなく、ミニキャンプを張ることになった。シーズン中、初めての経験だった。

野球選手以前に、アスリートとして

 ファームの入来祐作チーフ投手コーチは、ミニキャンプの意図を次のように説明する。

「まずは体作りですね。野球選手以前にアスリートとしてどうあるべきかを見直すこと。今はまだ戦っていますけど、来年へ向けても自分がどうあるべきかを考えるいい機会になったと思いますね」

 年間143試合を戦うプロ野球選手。日々の試合をこなしながら肉体管理をする難しさ。ハードワークの中、いかにトップコンディションを維持するのか、伊勢はこのミニキャンプを通して気づかされた。

【次ページ】 体を根本的に作り直した

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