「やはり、自分がその環境で、いかに成長できるか（が大事）だと思うので。自分が一番成長できる環境を、今までチョイスしてきました。色々な方の助けもありましたし、自分の直感も信じて、人生において良い選択をできてきたのかなと思います」

　現在のなでしこジャパンにおける彼女の活躍や、リバプールの一員として躍動する姿、そしてリバプールのウェアに身を包んで見せる笑顔を見れば、彼女が人生において良い選択をできたことはわかるはずだ。

　かつては「世界で活躍する選手になる」ことを人生の目的にしていた長野は、自身の努力と様々な人の支えがあって、無事に目的を達成できた。

　では、現在の彼女は、目的のない生活を送っているのだろうか。決してそんなことはない。

新たな人生の目的は、かつての自分のようにサッカーを愛する少女のために尽力すること

「本当に今までサッカーしかしてきてなかったっていうこともあって、サッカーをやめた後の将来というのを想像するのは少し難しいのですが……」

　注意深くことわりを入れたうえで、これからの人生の目的を長野は力強く語ってみせた。

「私はサッカー人生を通して、たくさんの人に出会い、たくさんの人の支えがあって、今こうしてサッカーをできています。私も誰かの役に立ちたいです。『（プロや日本代表として）サッカーをしたい』（と考える）多くの女の子が日本にもいるので、そういう小さい子たちのための環境作りはやっていきたいなと思っています」

サッカーを愛する多くの日本の女の子たちのための環境作りに意識を向ける

　彼女が多くの人の支えやサポートを挙げてきたのは決して優等生だからではない。心から感謝しているためだ。

　だからこそ、支えてくれた人たちが自身にしてくれたようなことを、次の世代の女の子たちに向けてやってあげたいと長野は真剣に考えている。

　日本サッカー界で最初に世界一になったのは女子なのだが、現状では、男子に比べて将来の選択肢は決して多くはない。そうした状況もわかっているからこそ、彼女はかつての自分と同じように大志を描くサッカー少女たちのために尽力することを、新たな人生の目的の一つとして掲げるのだろう。

　なお、なでしこジャパンが世界一になったときエースの澤が背負っていたのは10番だった。現在、長野が託されている背番号である。

　長野もまた、偉大なるレジェンドのように今を全力で生きながら、次の世代に夢を与えられる存在になっていくはずだ。

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