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「ご飯、どうするの」阿川佐和子が綴る仰木彬監督から”まさかのお誘い?”秘話… 牛タン店でイチローに遭遇「今度、阿川さんの対談に出ろや」
text by
阿川佐和子Sawako Agawa
photograph byTatsuo Harada
posted2024/09/26 17:01
1995年のオフ「週刊文春」の阿川佐和子対談連載<この人に会いたい>に仰木彬監督が登場
監督行きつけのその焼き肉屋さんでさんざん飲んで食べてお腹がいっぱいになったと思ったら、
「じゃ、次」
店を出るや、監督がゆらゆら向かった先は、そこから数歩先にある店だった。扉を開けて中に入ると、そこはお寿司屋さんではないですか。
「ここでちょっと刺身でもつまみながらもう少し飲みましょう」
焼き肉を食べたあとお寿司屋さんに流れたのは、人生、後にも先にもこのとき一回きりである。どれほど酔っ払ったか定かな記憶はないけれど、翌朝、起きたら激しい頭痛と胃もたれに参ったことだけは覚えている。
浅草の牛タン屋にイチローが…
その日から数カ月後の春うららかなる時節、担当編集者から連絡が入った。
「仰木監督が、例の浅草の牛タン屋さんに行きましょうって」
東京への遠征ついでに約束を叶えようというご意向だ。なんと律儀な。さっそく日取りを合わせて浅草へ向かうと、待ち合わせをしたホテルロビーで監督が本当に待ってくださっていた。
「ここから歩いてすぐの店なんだ」
畳に低い長テーブルを並べたその店で、今度はおいしい牛タンを次々に網で焼いていく。宮古島のときより少しリラックスした気分で監督と談笑していると、そこへ、
「お疲れ様でーす」
イチロー選手が仲間二人と一緒に店に入ってきて、隣の長テーブルに陣取った。
「おお、イチロー。こちら週刊文春の方と阿川佐和子さん」
「あ、どうも」
イチローに対談の打診…反応は?
私は興奮した。本物のイチローだ! こんなところで会えるとは。担当のM氏はさすがに抜け目がない。すかさず監督に向かい、
「今度、イチローさんにも対談に出ていただけないでしょうかね」
囁くや、監督ったら即座に、
「おお、イチロー。今度、阿川さんの対談に出ろや」
その場で本人にプッシュしてくださったのである。監督、いくらなんでもそりゃ、拙速過ぎやしませんか? と、声に出して押しとどめたわけではないけれど、私は内心、慌てた。対するイチロー選手はどう反応したか。
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Sports Graphic Number 1104
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