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「井上尚弥に破壊された?」あのフルトンが復帰戦であわやKO負け…フェザー級は魔境なのか「トレーナーに聞く“井上ショック”の後遺症」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byL:Naoki Fukuda
posted2024/09/17 11:02
井上尚弥との一戦(左)以来となる復帰戦で勝利したスティーブン・フルトン。試合後、前チーフトレーナーのワヒード・ラヒーム氏に話を聞いた(筆者撮影)
1階級上のより大柄な選手との戦いにアグレッシブなスタイルで臨めば、被弾の際にダメージを受ける可能性は高まる。まだその戦い方と、新階級へのアジャストメントを進めている最中であればなおさら。フルトンが今回、2度にわたって明白に効かされてしまったことは、それらの産物だったのだろうか。
「私が目指してきたものとは少し違うが、攻撃的なスタイル自体はスティーブンも気に入っている。これから仕上げていくのだろう」というラヒームの言葉通り、今後、フェザー級&新スタイルに慣れるにつれて戦い方が落ち着く可能性もある。そうすれば効かされることもなくなるかもしれない。少なくとも本人と陣営はそう期待しているに違いない。
“モンスターの影”を完全に払拭できるか
ただ……そんな流れに納得はしたとしても、そのスタイル変更が本当に適切なことなのかには少々疑問も残る。
これまでもフルトンは状況に応じて接近戦をこなしていたが、もともとハードパンチャーではない30歳が上の階級の選手たちによりアグレッシブな戦いを挑むのは正しいのか。カストロ以上のパワーを持つパンチャーたちのパンチにも耐え切れるのか。そして、すべての後で、「軽量級選手としては破格のパワーを誇った井上のパンチをまともに浴びたことの影響」への疑いが完全に払拭されたわけでもない。現状では推測するしかないが、それらのクエスチョンへの答えは、今後のフルトンのキャリアの中で提示されていくのだろう。
「スティーブンが126パウンドで戦うのは3戦のみのプランだ。次戦でWBAかWBC世界フェザー級王者への挑戦を目指しているよ」
ラヒームのそんな青写真通りなら、“モンスターの影”を引きずっているかどうかのアンサーが見えるのはおそらく世界戦の中ということになる。少々酷にも思えるが、ボクシングの世界とはそういうもの。フルトンにとってのフェザー級での“審判の日”は、スリリングで残酷な結果と背中合わせの大一番になるはずである。