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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「クレイジーだと思われてしまった」井上尚弥に異例の抗議…物議を醸した“バンテージ発言”は心理戦ではなかった? フルトンのトレーナーが釈明
posted2023/10/24 11:05
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
スティーブン・フルトンのチーフトレーナーを務めたワヒード・ラヒームのインタビュー。後編では、井上尚弥戦の前、公式会見時に井上のバンテージの巻き方に抗議したことについて。フィラデルフィアのジムにいたラヒームは、その真意、真相を静かに紐解いていった。
【全2回の後編/井上尚弥戦のウラ話を明かした前編から続く】
なぜ?バンテージの巻き方に抗議
――あなたは日本コミッションのルールでは許可された素肌にテーピングをした上でバンテージを巻く日本式の方法に抗議し、井上側が譲歩する形で落ち着きました。あの一件を今、どう振り返りますか?
ワヒード・ラヒーム(以下、WR) 私は私のボクサーを守ろうとしたんだ。何人かの人間と話をして、日本のルールがどういうものであるかを知り、それに関しては理解した。最終的にはああいう形になったが、井上は何か間違ったことをしようとしていたわけではない。
試合前に何らかの騒ぎが持ち上がると、興行はより興味深いものになるものだ。1つ例を挙げると、公開練習の際、フルトンには軽いシャドーボクシングだけで引き上げさせた。その後、ミスター大橋の指示で井上も同じことをやり、そこで取材を受けた私は「これで盛り上がるからいいじゃないか」と答えたんだ。
――試合前の喧騒はマインドゲームの一部だったということでしょうか?
WR その通りだよ。ボクシングはチェスみたいなもので、マインドゲームが重要になるものだから。
――それでは日本では井上のバンテージの巻き方は問題ないということも知っていて、あえて抗議したということでしょうか?
WR いや、それについては知らなかった。日本ではルールが違うと分かったのは抗議をした後だ。バンテージの巻き方はこれまで通り、WBC、WBOの世界戦で適用されてきたのと同じルールに従ってやるつもりだった。それが日本の規則は違い、そこで混乱が生じた。また、会見では通訳を介したため、自分の言いたいことが意図した通りに伝わらず、私はクレイジーだと思われてしまった(笑)。
――確認ですが、「選手を守るため」と「マインドゲーム」の両方のための抗議だったということですか?