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進路調査で「就職、サウサンプトン」“プロなんて考えられなかった”少年がプレミアを目指すまで…スカウトも驚く高岡伶颯(17歳)の才能とは
posted2024/09/16 17:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Ryo Kawagoe
発売中のNumber1103号に掲載の[逸材17歳の素顔]高岡伶颯「僕、サウサンプトンに就職します」より内容を一部抜粋してお届けします。
担任も太鼓判を押す、高卒での海外挑戦
猛暑日が続く7月のある日、普通科スポーツ進学コース3年B級のグループLINEにメッセージが入っていた。差出人は担任の原敬太先生。日章学園高校サッカー部の監督でもある。用件は進路調査だった。進学先、就職先が決まっている生徒は、明記して返信するように書かれている。内定先の企業名、進学先の学校名が並ぶなか、実直な高岡伶颯は少し戸惑いつつもスマートフォンの上で指を動かした。
「就職、サウサンプトン」
2023年のU-17ワールドカップで4ゴールを記録した快足FWは複数のJクラブからも獲得オファーを受けていたが、『就職試験』となったトライアルで認められ、すでに内定済み。来年3月12日に18歳の誕生日を迎えると、プレミアリーグのクラブに正式に加入する。1年時から学級担任を務めてきた原監督は、教え子が自ら選んだ大きな挑戦に太鼓判を押す。
「伶颯は高卒で海外に行っても大丈夫だと思います。言葉の問題を解決するパーソナリティーもあるので。クラスでは大人しい優等生なのですが、サッカーになると、自己主張できますし、オープンマインドでコミュニケーション能力も高い。親御さんの教育も良かったんだと思います。恥ずかしがらずに500人くらいの前で一発芸もできますし(笑)。何よりサウサンプトンに能力を高く評価されていますから」
宮崎県都城市で生まれ育った高校3年生に提示されたサラリーは、上限額が決まっているJクラブの数倍以上。育成ビジョンも明確に示され、すぐにレンタルに出されることもない。プロ1年目はトップ昇格を目指すU-21チームの一員としてリザーブリーグで経験を積む予定だという。
盆中日の夕刻、あと半年ほどで英国へ飛び立つダイヤの原石は、雑然とした部室の雰囲気に溶け込んでいた。よく日焼けした顔をまっすぐに向けて「2年目にはプレミアリーグの試合に出て、チームに貢献できる存在になりたい」と野心を燃やす。
「プロを目指すなんて考えられなかった」
高校に入学する前までは夢にも思わなかったことだ。純粋にボールを蹴るのが楽しくて仕方なかった少年時代は、好んで欧州サッカーの映像を見た記憶もない。「憧れの選手もいなかったっす」と素っ気ない。