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「取材陣にこんな笑顔を…」リーグ戦優勝のスターダム・舞華、ハイテンションの理由は…「SNSもしんどい」感情を押し殺した王者時代からの激変
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/09/14 11:04
5★STAR GPで優勝を果たし、笑顔でトロフィーを掲げる舞華
中野たむと「約束のタイトルマッチ」
岩谷との準決勝で大ダメージを負った。肉離れに加えて手足の痺れも感じたという。
「でも、そのことで逆に集中できましたね。決勝までの時間でいったんクールダウンして、水分と糖分を摂って。危機的な状況だったから集中できたし、決勝の相手が(タイトルマッチで裏切られた)上谷だったから思い切りぶちかませました」
どうしたってプレッシャーは感じる。そのプレッシャーを楽しむことができたのが1年前との違いだと舞華は語った。次に狙うのは赤いベルト奪還だ。リーグ戦決勝と同じ大会で新チャンピオンになったのは中野たむ。ナツコとの抗争から挑戦権を得ていた。
舞華からベルトを強奪したナツコは、チャンピオンの権限でリーグ戦にエントリーせず。たむはリーグ戦で全敗という結果だった。そんな状況でベルトを引き寄せてしまうのもたむの強さか。
ともあれ、9月14日の大阪大会ではリーグ戦全敗のチャンピオンと全勝の挑戦者が対峙する。舞華としては、チャンピオンに勝ってベルトを巻くチャンスだ。たむとのタイトル戦は、これまで果たせなかった「約束」だと舞華。
「ただ、たむとは闘うタイミングがなかっただけで。やれば勝っていたと思うし、そこは気持ち的に大きな違いはないですね」
昨年秋、たむがナツコとの防衛戦に勝ったものの足を負傷しベルト返上。空位の王座に舞華が就き、その舞華からナツコがベルトを奪った。そして今はたむがリーグ戦全敗ながら再びチャンピオンに。時系列が戻った、あるいは王座をめぐるシチュエーションにねじれが生じていると言ってもいい。
もちろんたむにとっては、自分がベルトを巻いている状況こそ正当なのだが。舞華が狙っているのは、たむに勝った上でナツコに雪辱、団体最高峰のベルトにまつわるねじれを解消することだ。
「私が全部正して、選手が気持ちよく闘える、それを気持ちよく見てもらえる状況にします。やっぱ私がベルト巻くしかないっしょ(笑)」
以前とは違うチャンピオンに
いまベルトを取り戻せば、以前とは違うチャンピオンになることができるとも考えている。
「環境から変わりましたから。体制が変わってしばらく経って、今はスターダム全体が明るくなり始めてる。そういう時にベルトを落としてしまったんですけど。前回はベルトだけじゃなく、いろんなものを背負って闘ってきた。でも今チャンピオンになったら、その時こそ自分がやりたいことができるはず。本当になりたかったチャンピオンの姿になれると思います」
リーグ戦で対戦できなかった、別ブロックの選手とも防衛戦がしたい。「まだ私とやってないじゃないか」とケンカを売られるのは大歓迎だ。
「その先に他団体、海外での防衛戦もやりたいですね。今のスターダムは選手がやりたいことをアピールしやすい状況。だから余計にベルトがほしい」
曰く、現在は「明るく楽しく自由なスターダム」。その頂点の座が誰よりも似合うのは、トラウマもプレッシャーもねじ伏せて笑顔がトレードマークになった舞華なのかもしれない。