スポーツ物見遊山BACK NUMBER
がん闘病30年…“虎ハンター”小林邦昭、68歳で逝く「マスクを破いたり、剥がしたり…」初代タイガーマスクと抗争、引退後は道場の“名物管理人”
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byTokyo Sports Press
posted2024/09/13 11:13
9月9日に亡くなった小林邦昭さん。初代タイガーマスクとの抗争など昭和〜平成のプロレス界を彩った(写真は1982年11月4日、WWFジュニアヘビー級&NWA世界ジュニアヘビー級選手権)
ある日のこと。西村修が道場前に愛車(かなりの高級車)を置いて用事を済ませていたところ、小林さんがバケツやら何やらを持って、西村の愛車の前に立っている。破壊王こと橋本真也さんが、天山広吉のキャディラックのエンブレム部分に、実寸大の頭蓋骨のおもちゃをガムテープでベッタリと張り付けて「これは星野(勘太郎)さんのシャレコウベだぞ!」と笑っていた姿は目撃したことがあるが、そうしたタチの悪いイタズラの類でもなさそうだ。
主不在の高級車をせっせと洗車し始めた小林さんは、何やら新しい機械を持ち出してはボディを磨きはじめ、さらにコーティングまで行い、西村の愛車は新車が如くピッカピカに。用事を済ませて戻ってきた西村は勝手に綺麗になった愛車を前に目を丸くするばかり。後輩選手の愛車を自主的に洗車する先輩というのも初めて目撃した。
他団体も含めたマット界のウワサ話が大好きで地獄耳。まだ携帯電話が普及していない時代には、取材に訪れた記者やカメラマンらに気さくに話しかけては各団体へと散った後輩たちの様子を聞いたりするのが大好きな人でもあった。また、あんなに筋骨隆々ながん患者も見たことがない。
今は30年以上にも及んだ、がんとの戦いを終えた小林さんに「お疲れさまでした」と言いたい。合掌。