星　この夏も何人かいましたが、木製バットを使う選手は特に大変です。というのも高校野球は滑り止めの類いはロジンバッグしか使っちゃいけないんですよ。ピッチャーがマウンドで使う白い粉が詰まった正方形の小袋です。打者もあれしか使えない。プロが使うような松ヤニスプレーは禁止されているので。ただ、グリップテープを巻くのは認められています。なので木製バットでホームランを打った智弁和歌山の花田悠月君はテープをグリップに巻いていましたよね。早実の宇野真仁朗君も木製バットを使っていましたが、やはりテープを巻いていました。テープを巻いてしまうと最初に握った感触とまったく別のものになってしまうので、本来は、おすすめできないんです。でも、ああしないと夏場は特に怖いと思います。ピッチャーでもまったくロジンをつけなくても大丈夫な選手と、「追いロジン」といってこれでもかというほどロジンを使う選手がいるんですよね。

野球専門店・ベースマン立川店のカリスマ店長、星徹弥さん。「2.0超えの野球用具視力を持つ男」の異名を持つ

――選抜大会のとき、木製バットを使う選手が増えない理由としてコスト面をあげていましたが、松ヤニスプレーが使えないというのも大きい気がしますね。ちなみに花田君と宇野君のバットはどんなものだったのですか。

星　花田君は「G25」。つまり、ジャイアンツの背番号25、岡本和真選手のモデルです。これは定番モデルです。宇野選手はチャンドラー製でしたね。ドジャースの大谷翔平選手が使っているのと同じメーカーです。材質がものすごく硬いのが特徴なんですよね。日本の販売店では、基本的に置いてないと思います。WBCで優勝し、大谷フィーバーが巻き起こったとき、代理店から置いてみませんかという話をもらったのですが、代理店を挟んでしまうと1本、3、4万円の価格になってしまいそうだったので、お断りしました。木製バットの相場は2万円前後なので、倍近い。すぐに折れる可能性を考えると、ここまで高額な木製バットを買えるお客さんはそうはいないでしょうし、生産量が少ないのでコンスタントに入荷するのも難しそうだったので。宇野君は新聞報道によるとお父さんがチャンドラーの輸入代理店の社長をしているそうです。だから、手に入るんでしょうね。西東京大会で早実と対戦したチームの選手たちは、口々に「宇野の打球はやばいっス」って言ってましたよ。

早稲田実業の宇野真仁朗。大谷翔平と同じチャンドラーの木製バットを使っていた。対戦したチームの選手は「宇野の打球はやばいっス」と語ったという　©JIJI PRESS

高校野球でもブーム「コユニ」とは？

――他に今大会で目立った用具はありましたか？

星　「コユニ」がめっちゃ増えましたね。

――コユニ？

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