草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
「佐々木朗希のグラブ」は価値大。
スター球児と用具メーカーの関係性。
posted2019/07/29 11:10
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Asami Enomoto
「平成の怪物」と呼ばれた松坂大輔(中日)が今シーズン初登板した7月16日、名古屋から遠く離れた岩手県花巻球場では「令和の怪物」が最後の夏の初戦を迎えていた。
佐々木朗希(大船渡高)。
25日の決勝、花巻東戦に登板せず敗退したものの、身長190センチ、最高球速163キロを計測したこの右投手は、間違いなくこの予選、最も注目された野球選手だった。
夏本番を迎えようとする6月、主要3誌が今年も地方大会の展望号を発売した。各地方大会の有力校や話題の選手を紹介しているが、高校野球ファンの間では「今年の表紙は誰か」ということも事前に話題になる。多くはその年の選抜大会で活躍した有名選手が飾るのだが、今回はそうした予想は無意味だった。
「考えるまでもなく、佐々木選手で決まりですからね。むしろ、議論の大半はどういった写真でいくのかということに費やされました。結果、2誌は佐々木選手が左足を挙げた瞬間の全身を収めたもの。
残り1誌がもう少し寄せて上半身中心のものでした。佐々木選手の立ち姿は美しく、非常にインパクトがあるのですが、同時に(表紙ではなくとも)これまでに何度も、何枚も掲載されている。既視感を嫌うとアップになったということでしょうね」
某誌の編集者はプロセスの一端をこう明かす。過去4度のチャンスでは甲子園に届いていない令和の怪物ではあるが、出場が当たり前の強豪私学ではなく、大船渡というオールドファンの心をくすぐる公立校というバックボーンも手伝って、取材熱の高まりはとどまるところを知らない。
「中学生への影響度が大きいんです」
ところで、先の編集者はこんなことも教えてくれた。
「当然、投球フォームの写真ですから佐々木選手はグラブを左手につけていますよね。ミズノ社の製品です。これが野球をやっている小、中学生への影響度が大きいんですよ。
もちろん、野球雑誌ですからミズノさんだけではなく主要運動具メーカーさんは広告を出してくれています。ですからミズノさんだけを特別扱いしたわけではないのですが、結果としてはあの表紙には広告以上に広告価値があったんじゃないでしょうか」