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「大人になった」「前はイライラしたけど」久保建英と堂安律の成熟は取材エリアでも「純也くん!純也くん!!」笑いを取る伊東純也の後ろで久保は…
posted2024/09/08 17:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kiichi Matsumoto
彼らのサッカー人生は青い春から“熱い”夏へと移りつつある。前回のW杯最終予選から3年。夏の夜の花火大会のようだった9月5日の中国戦は、確かな成長を教えてくれた。W杯最終予選(3次予選)の中で記録的な7-0という快勝劇は、右サイドに置かれた2人のレフティーの“成熟”が生んだ。
「大人になった」「良さを出し合う」
「大人になったというのが1つと、やはり(今は)余裕もあるので」
そう語る久保建英、そして堂安律である。
W杯本大会の参加国増加に伴い、アジア最終予選出場国も6カ国増えて18カ国になった。初戦で顔を合わせた中国は、グループリーグの6チームのなかで第5シード。前回大会までのレギュレーションであれば最終予選に進めなかったチームだ。今回の一戦で大切だったのは、格下のチームに番狂わせを演じさせる余地をなくすこと。だから、前半のうちに2点をリードできたのは大きかった。
そして、この2点を呼び込んだのが〈3-4-3〉で挑んだ日本の右ウイングバックに入った堂安と、右シャドーを任された久保だった。
先制点直前のシーンを、思い出してほしい。
11分、久保が右のサイドラインぎりぎりに開いてボールを受けた。ドリブルで中にカットインしてからクロスを上げると、久保と入れ替わる形でゴール前に入っていた堂安がヘディングで合わせた。これは相手GKの好セーブに阻まれたが、そこで得たコーナーキックを遠藤航が頭で決めて先制点が生まれた。
なぜ、2人はポジションを入れ替えていたのか――。
「タケ(※久保の愛称)がボールを受けたがる選手なのはわかっているので」
堂安はそう切り出し、証言を続けた。
「自分はゴール前のポジショニングで(危険なエリアを)探しながらプレーするのも得意なので。彼の良さと、自分の良さとを出し合いながらのポジショニングでした」
久保はボールに触れてプレーすることで、良いリズムを作る。一方の堂安は、サイドでプレーすることの多いタイプにしては珍しく、ストライカーのようにゴール前でボールを根気よく良いパスを待つことができる。お互いの強みがケミストリーを起こして生まれたシーンだった。
2点目直前、久保が考えていたこととは
そして、2点目。この試合のハイライトだった。
前半アディショナルタイム、久保と堂安は再び位置を入れ替えていた。右サイドに開いた久保が中国の2選手を引きつけ、パスを出した。これを受けた堂安がクロスを上げると、左ウイングバックに入っていた三笘薫のゴールをアシストした。
久保は外側にいた理由をこう解説した。
「(前半の)15分から30分ぐらいですかね、ボランチ2人が少し左に流れがちだったので。僕も本当はボールに関わりたかったですけど、右で待っていて、こっちに(ボールが)来たときに、堂安選手を1人にしないことを意識していました」
その上で、ボールを受けてから考えたことについても説明した。