ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥“KOショー寸前”で37歳ドヘニーに異変…会場騒然“まさかの結末”までに何があった?「イノウエに戦略を変更させた」ドヘニー陣営の言い分
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/09/04 17:24
挑戦者のTJ・ドヘニーを攻める4団体統一王者・井上尚弥。“まさかの結末”を迎えるまでの攻防を両陣営の証言から検証する
井上尚弥の見解「ああなってしまうのは仕方ない」
いよいよモンスターのKOショーが始まる――。そんなムードが確実に漂った直後だっただけに、返す返す残念な結末だった。試合後の記者会見で、全体を振り返った井上のセリフに納得させられた。
「正直、出来が悪いと思っていなくて、ドヘニーほどのキャリアを持つ選手がああいう(守備的な)戦い方をしたら、ああなってしまうのは仕方ない。相手あってのボクシングなので。あの相手に自分としては丁寧に最善を尽くせたと思う」
東京ドーム興行を終えたあと、井上は「これは集大成ではない。ここからキャリアを加速させていく」と決意表明していた。進化を求めた一つが体重の作り方だ。前回から本格的に取り入れた新しい減量方法も2回目となり、井上は当日体重を過去最重量の62.7kgまで増やした。
「今回は意図的に増やせるだけ増やしてみようというか、自分のボクシングスキルが落ちない程度にどこまでリカバリーできるか試してみた。若干重かったですね。体重の作り方も踏まえて、当日の適正体重を定めていきたい」
試合後、トップランクのプロモーター、ボブ・アラム氏はリング上で「年内に東京でもう1試合して、来年にはラスベガスで大きなイベントを開催したい」と発表した。年内は12月が有力で、大橋会長によれば、IBF指名挑戦者のサム・グッドマン(オーストラリア)、WBA指名挑戦者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)らが対戦相手の候補に挙がっているという。
日本人選手歴代単独1位の世界戦23勝という記録も、通過点でしかないのだろう。まさに無双である。井上は過去に「格下」と言われた相手との対戦で、雑になる時間帯があるなど、やや集中力を欠くシーンもいくらかあったが、この日はまったくと言っていいほどスキを見せなかった。一段と凄みを増したモンスターが、さらなる高みを目指す。