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「反省してます!」平本蓮の“態度が変わった”ある質問…「信者とアンチが罵り合い」ドーピング否定会見で考えた“SNS騒動という論点”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/09/03 17:06
9月2日、RIZINの発表に先立ち、都内で会見を行った平本蓮
会見に同席した吉野弦太弁護士は「憶測でSNSでやり合うのはおかしい」と語っている。まったくもってその通りだ。しかし付け加えておかなければいけないこともある。他ならぬ平本が、未来をはじめとする周りの選手たちとの“SNSでのやり合い”で話題を呼び、知名度を高めていった選手なのだ。
これからSNSとどう向き合っていくか。平本に質問すると、彼はこう言った。
「反省してます! 今回の騒動で、自分はあまりにも嫌われてるんだなと。自分で蒔いた種だったのかもしれないです」
驚くほどストレートな返答だった。パリ五輪でも声明が出されたが、SNSでのアスリートや芸能人に対しての誹謗中傷は無視できないレベルになっている。RIZINも同じで、試合前後には“信者”と“アンチ”が果てしなく罵り合っている。その中でのし上がった平本だが、行き着く果てが弁護士を伴っての会見という事態だったとも言える。
判断基準は自分の好き嫌いだけ。言いっぱなしで責任は取らない。根拠なしに匿名で人を罵る快感の虜になった人間がSNSには溢れている。平本が会見開催を決めた理由の一つも、騒動が大きくなりすぎていたことだった。ある種の自業自得ではあるのだろうが、しかし平本だけの責任とも言えない。
検査結果以上に重要な“SNS”という論点
本来であれば、ネットでの告発を受け入れるにしても榊原の言うように「RIZIN公式の検査結果がすべて」で済む話だ。それ以外の基準を混ぜてしまっては、選手も対応しようがない。ルールがあるからこそ「風邪薬のこの成分にも気をつけよう」となるのだ。
しかしネットを見ると、単に「平本があんなに強いわけがないから怪しい」といった声もある。音声がネットに出て以降、何人もの選手が話題に加わってもいた。
誹謗中傷に対しての「これで次の試合がさらに注目されると思って、Xを見て楽しんでました」というコメントはいかにも平本らしかった。そんな平本に、騒ぎ続ける人間たちに言いたいことはあるかとも聞いた。
「薬物中毒者とかも言われたので、その辺は(弁護士の)先生と話していこうと思います」
するべき対処はするということだ。ただ現時点では、ネットでの誹謗中傷への対処が主眼ではないという。赤沢に対しても、今すぐ法的手段をという考えではないようだ。今回の会見ではまず、平本が自分の言葉で“シロ”であると訴えるのが先だと。
それでも「クスリを“買ったけど使ってない”なんて信じられるか」という意見はある。RIZIN公式の検査結果が陰性であっても「それでもオレは怪しいと思う」という人間は出続けるはずだ。もはやSNSはそういう世界になってしまっている。
「平本蓮はシロかクロか」は、繰り返すが検査結果を待てばいい。それ以上に問題なのは、騒動を極端に大きくするSNSではないか。匿名の“言いたい放題”がビジネスを盛り上げることもあるが、自分に向けられた言葉で死ぬ者もいる。ユーザー全員が、それを忘れてはいけない。