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「反省してます!」平本蓮の“態度が変わった”ある質問…「信者とアンチが罵り合い」ドーピング否定会見で考えた“SNS騒動という論点”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/09/03 17:06
9月2日、RIZINの発表に先立ち、都内で会見を行った平本蓮
“悪魔の証明”を求めるような質問も…
付け加えると、会見で平本に質問した中には「クロ前提」のような記者もいた。以前と比べてなぜ体が大きくなったのか(ステロイドのおかげでないなら何なのか)と聞かれ、平本は思わず声を荒げていた。
「(記者に)筋トレしてないですよね? 10週間死ぬほどフィジカルトレーニングやればデカくなりますよ。これまでやってないトレーニングも取り入れてやってきてるんで」
質問の中には「潔白を証明するために」という言葉もあった。やっていないことを証明しろと“悪魔の証明”を求めたいのか。当たり前だが、平本にそこまでの責任はない。証明しなければいけないのは「クロ」を主張する側のはずだ。
もちろん、筆者も平本に対して「薬物に関する知識や扱いがあまりに雑ではないか」という疑問が残ってはいる。会見での説明によると、試合前にヒザを負傷した平本は、フィジカルトレーナーの勧めから回復を早める薬を何度か注射したという。
これはドーピング検査には引っかからない=禁止薬物ではないそうだが、平本がその薬品の名前を言うことはなかった。長い付き合いのトレーナーを信頼しているとのことだったが、ならばなおさら会見前に確認しておくべきではなかったか。
結局、この会見も火に油を注いでしまったのか。とはいえドーピング検査の結果さえ“火消し”になるとは思えないほど状況は酷い。平本を嫌う者たちは検査結果しだいで態度を変えるのだろうか。イベント自体、ジャンル自体を燃やし尽くしてしまう前に、我々に何ができるのだろうか。そのままでいいとは絶対に言えない。
[追記]平本の会見の3日後、9月5日にはRIZINが会見を開催した。会見には榊原信行CEOに加えRIZIN医療部のドクター3人が出席。7.28『超RIZIN.3』で対戦した平本蓮、朝倉未来ともにドーピング検査の結果が陰性であることが発表された。つまり“シロ”だ。
ただし榊原は「(薬を)買ったけど使ってない」という説明や医師以外から提供された薬を自身で注射する行為は誤解を招くものであり、平本に「猛省」を促した。また平本の次戦として大晦日イベントのオファーを出す予定だが、それはもう一度ドーピング検査をクリアした上でのことだとしている。
さらに榊原は「これだけ世間を騒がせたのだから」とRIZINのドーピング関連ルールに関して「抜本的な見直し」を宣言。より検査体制を厳しいものにするとともに新たなドーピングポリシーを策定していくとした。選手、関係者向けの勉強会も開いていきたいという。
もちろん、何をしようが「RIZIN自体が信じられない」、「平本クロ以外の結果は受け入れられない」という人間もいる。ネットの騒ぎは続く。ただ今回の騒動が発端であっても、日本格闘技界のドーピングに対する取り組みが前進するのであれば、それは歓迎すべきだろう。