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「甲子園の階段でぐったりするファン」「車イスで運ばれた体調不良の女性」酷暑の高校野球…現地で私が見た異変「観戦ルール、2つの改革案」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/25 11:05
8月13日の第3試合、智弁和歌山対霞ヶ浦。試合中に足がつったとみられるセカンドランナー
今回、3日間だけ行われた2部制の導入は大会終了後にレビューが行われ、おそらくは拡大の方向で検討されるのではないか(問題は第4試合を行った場合の試合終了時間だろうか?)。
2部制の導入を聞いた時は、「はて?」と疑問に思ったが、実際に例年とは違う蒸し暑さを体感すると、合理的なのかと思う(余談だが、新聞記者たちの中には2部制の導入によって労働時間が増え、かえって大変になっている人もいると聞く)。
また、他にもリスクを減らす方法はあると思う。
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ひとつは、途中退場を認めることだ。
いま、甲子園の観戦では一度退場してしまったら再入場は認められていない。
もし、「途中退場―再入場」が認められれば(大相撲の国技館のように一度だけ再入場OKとか)、近隣のお店で休むことができる。たとえば、スターバックス阪神甲子園駅前店でフラペチーノを飲みながら、壁に架かった虎の絵を見ているだけでも、だいぶ助かる。
また、提案したいのは、ウィンブルドンのリセールシステムだ。
ウィンブルドンでは帰宅する人が「チケットボックス」に自分のチケットを入れて帰る場合がある。
ありがたいことに、その返却されたチケットは、すぐにリセールに回されるのだ。それを目当てに並ぶ人もいる。これは本当に合理的な仕組みだと思った。
神様、仏様、ダイキン様…
甲子園の第4試合で空席が目立つのは、もう帰ってしまった人がたくさんいるからで(最近は空席状況によって途中で発売する日もあるようだが)、リセールがあると分かっていれば、暑さを避けて観戦に出かけることも可能だ。第4試合だったら、三塁側内野スタンドに座り、一塁側スタンドの隙間からのぞく西陽を見ながらビールを飲むのは、最高の体験である。
試合、大会の進行に関しては暑熱対策が進んでいるが、観客にやさしい大会になって欲しいと思う。
今年の甲子園で「涼」を感じた瞬間といえば、試合間に通路に設置されたダイキンの強力なクーラーのお世話になった時だけである。私だけではない。観戦に訪れたみなさん、「ダイキン様」に向かい、頭を垂れて涼む姿はなにかしら神々しいものがあったのでした。
嗚呼、神様、仏様、ダイキン様。
私も黙ってその涼風を浴びたのでありました。