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青森山田「史上初の甲子園ベスト4」のウラ側で…二枚看板だった中学全国Vエースが陥っていたイップスという“苦境”「センバツ後から違和感が…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/22 17:01
春までは青森山田の「二枚看板」として名をはせた櫻田朔だが、選抜以降不調に。エース・関浩一郎とは明暗分かれる夏の甲子園になった
その関が青森山田を選ぶほど刺激を受けたピッチャーこそ櫻田朔だった。
「違う世界にいる人でした」。関がわかりやすく表現する。それだけの実績を櫻田は持つ。青森山田シニアではエースとして全国大会優勝。のちにキャプテンとなる橋場公祐や對馬陸翔ら高校でも主力となる選手のなかでも、彼は象徴的な存在だった。
高校では1年の秋に右ひじのクリーニング手術をするなど故障がちで、関ほど実戦経験を積めなかった櫻田が一躍脚光を浴びたのが、2年となった昨年秋の東北大会決勝である。
夏の甲子園でベスト8の八戸学院光星相手にノーヒットノーラン。この快挙の背景には準決勝で関が2安打、12奪三振の快投を演じていたことへの対抗心もあった。
「勝って嬉しい反面、複雑で。関がすごいピッチングをしたんで『超えてやろう』っていう気持ちがあの結果になったと思います」
関と櫻田のライバル関係。それは、中学で無名に近かった関を青森山田に招き入れた監督の兜森崇朗の狙い通りでもあった。
「競争意識を高めてほしいとは思っていたんですね。秋みたいにお互いいいピッチングをすることが栄養素になるというか。関か櫻田のどちらかだけだったら、ここまでのレベルになっていたかどうか難しいところでした」
春まで「二枚看板」がウリだった青森山田に何が…？
青森山田といえば二枚看板。センバツまではそれが常に話題の中心にあった。
大会でも初戦の京都国際戦で1回無失点、先発した広陵戦でも5回途中まで無失点と、櫻田も関同様に存在感を示していた。
それが、先発した準々決勝の中央学院戦では6安打5失点と振るわず、4回途中で降板してしまう。櫻田によれば、この試合から少しずつ歯車が狂い始めたというのだ。
症状はすぐに顕在化したわけではなかった。現にセンバツ後の春の東北大会では、初戦の聖光学院戦で先発して5回を投げ3安打1失点だったように、最低限の結果は出していた。
ただ、このあたりから櫻田のなかで違和感は増幅されていったという。
本人は原因について「軽いイップス」と分析するが、そこにエビデンスはない。いつも通りに体を動かせているつもりでも、現実としてバッターが打席に立つと右腕を思い切り振れない。さらに、櫻田が煩悶している間にライバルの関は評価を高めていき自分だけが取り残されたようになってしまうため、そう思いたくなる気持ちもわかる。
「思っている以上に全然ボールがいかなくて、そこで落ち込んでしまって。その間に関が頑張って投げている姿とかを見るとますます焦っちゃって。悪循環でしたね」
