- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
「なめんな!とは怒りますよ」高校野球“まさかの番狂わせ”…大社高・石飛文太監督(42歳)が前日、取材記者に語った「こんな監督でよく勝てるなと…」
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2024/08/18 17:04
石飛文太監督(42歳)。32年ぶりに大社高校を夏の甲子園出場に導いた
――怒ってばかりで選手に恐れられる、すべて指示通りにやらせるというより、選手たちからある程度“なめられる”くらいのほうがいいんですかね?
「なめんな!とは怒りますよ。だからなんて言うんだろう、なめられてるわけでもないし、とはいえ尊敬もされていないと思います」
ここで石飛が外部コーチの大内秀則(49歳)を呼び止める。ちなみに大内は、大社が前回甲子園に出場した32年前のエースである。「記者さんがうちのチームよくわからないみたいなんですよ」。破顔する大内。そして「俺にもわからんわ」と答える。話はいつの間にか、創成館を下した大社がSNSでトレンド入りしていたことに移っていた……。
続けて石飛が選手を1人、呼び止める。「俺がどういう監督か知りたいんだって」。すると選手はニヤリとしながら言う。「素敵です」。怒られたことはあるのか質問すると彼は即答する。「しょっちゅうです」。
「まだ先発も決まってないんですよ」
大社のチーム像がつかめそうで、つかめない。ここで質問を変える。なぜ大社は強豪校相手にも動じないのか。なぜピンチの場面でもエラーをしないのか。そもそも初戦の相手がセンバツ甲子園で準優勝の報徳学園と決まった瞬間、「勝てる」と思ったのだろうか。石飛が笑みを浮かべる。
「おい、キャプテン。32年ぶりの甲子園なのに何を引いてるんだと思いましたよ。そしたら石原(勇翔/キャプテン)は『よっしゃ!』とか言ってて。全然よっしゃじゃねえよ、と。石原とかは対戦したかったらしいんです。でもね、勝ち上がってやるならまだしも、なんで最初なんだよ……とは思いますよね」
大社はなぜ勝てるのか。そのナゾは解決するどころか、早稲田実業との試合を翌日に控えたタイミングの取材で、より深まる。理想の試合展開を尋ねても「何も考えてないです。先発も決まってないんですよ」と言う。
「明日はベンチで『いけー! 打てー!』を叫んでるだけだと思います」
これが番狂わせを起こすチーム、24時間前の様相だった。
<続く>