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「無残な負け。もうダメ」なでしこ谷川萌々子30m弾にガク然も…銀メダルで“手のひら返し”ブラジル女子サッカー暗黒史「約40年も禁止令が」 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byMutsu Kawamori

posted2024/08/14 11:01

「無残な負け。もうダメ」なでしこ谷川萌々子30m弾にガク然も…銀メダルで“手のひら返し”ブラジル女子サッカー暗黒史「約40年も禁止令が」<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

パリ五輪女子サッカーで銀メダルを獲得したブラジルのマルタ。なでしこジャパンに衝撃的な逆転負けを喫した際には批判を受けたようだが……。

 10日に行なわれた決勝では、これまで五輪を4度、W杯を4度制覇し、世界の女子フットボールをリードしてきたアメリカと対戦。試合開始早々、決定機を作って優勢に試合を進めると、カウンターからシュートを決めた。当初、主審はゴールを認めたが、VARが発動されて「わずかにオフサイドがあった」としてゴールを取り消された。

 しかし、後半はパスミスが増えると、中盤を支配されて失速。アメリカにオフサイドとも解釈されておかしくないプレーで失点し、0-1で惜敗した。ブラジルは、2004年アテネ大会と2008年北京大会でも決勝でアメリカと対戦して敗れており、これが3個目の銀メダルだった。

退場劇で物議を醸したマルタが口にした「愛」

 試合後、これまで20年以上も女子代表を支え、今回が実に6度目の五輪出場だった名手マルタ(38)は「格上の相手を次々に倒し、決勝まで勝ち上がったこのチームを心から誇りに思う」と胸を張る一方で、このようにも訴えた。

「ブラジルでも、女子のフットボールをもっともっと愛してほしい」

 マルタ・ヴィエイラ・ダ・シルバ、通称マルタ。ブラジル北東部の貧しい家庭に生まれた小柄な少女がブラジルと世界の女子フットボールの歴史を変え続けてきた。パリ五輪ではスペイン戦での退場劇で物議を醸したが――この国の女子代表を引っ張り続けたレジェンドである。

 フットボールが大好きで、男の子たちに混じってボールを追いかけた。00年、14歳でリオのクラブの女子チームに入り、抜群のスピードと驚異的なテクニックを発揮して注目された。しかし、当時は女子の大会が少なく、国内でフットボールで身を立てることはほぼ不可能だった。

 04年、18歳でスウェーデンのクラブへ入団し、たちまちエースストライカーとなってゴールを量産。「スカートを穿いたペレ」、キング・ペレとの対比で「女王」と呼ばれるようになった。02年に代表入りすると、以後、W杯と五輪の両方に6大会連続で出場。2006年以降、世界年間最優秀選手に6度選ばれた。

実はブラジルで女子フットボールは“不人気”

 しかし、この超人マルタをもってしても、ブラジルが「女子フットボールの国」になることはなかった。

 その決定的な理由として――男たちは相変わらず女子のフットボールに関心が薄く、女性もフットボールへの文化的な違和感を捨て切れていないからだ。

【次ページ】 「ボールを蹴る女性は真っ当ではない」

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