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エース早田ひな、16歳張本美和を輝かせた“冷静な平野美宇”「自分がなんとかしないと…」8年前、リザーブに甘んじた天才少女の変貌
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by Yohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/08/14 11:02
唯一の五輪経験者として女子代表を牽引した平野美宇(24歳)
中国との決戦2日前の団体・準決勝のドイツ戦。第2試合でドイツのアネット・カウフマンに敗れ、「切り替えられないぐらい、気持ち的に落ちていた」という16歳の張本美和の表情は明らかにこわばっていた。
「思い切って!」
そんな不安定な気持ちを見透かしたかのように、平野は第4試合の直前、再びテーブルに向かった8歳年下の張本にそう語りかけた。その姿は年の離れた妹を心配する姉のようにも見えた。
「オリンピック初出場でしかも16歳。シングルスでの出場はとてもプレッシャーがあると思うんですけど、第2試合で負けて第4試合に入るとき“2回負けてしまったらどうしよう”という顔をしていたので、“自分がここで決めるんだ”くらいの気持ちでやって欲しいなと思っていましたし、やってくれると思っていました」
第1ゲームの序盤、シャン・シャオナに2-6とリードされた張本は、「また負けるんじゃないか」という不安が頭をよぎった。そんなとき、試合前に平野にかけられたこの言葉を、心の中で何度も繰り返したという。そして3-0のストレート勝利。試合後、張本は平野に抱きつき、安堵の涙を浮かべていた。
メダルを確定させた平野の完璧な仕事ぶり
平野も第3試合に登場し、1ゲーム目から両ハンドで積極的に攻めた。厳しい返球を受けても、強い球を打ち返し、貫禄のストレート勝ち。相手に傾きそうな流れを食い止め、勝利を手繰り寄せる見事な仕事ぶりだった。
「準決勝はこういうことが当たり前にあると予測していました。2-1で張本選手に回すという強い気持ちだけでした」