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「ウタ、ウタ!」柔道・阿部詩の号泣…海外では予想外の反響「彼女の涙を見て、オリンピックの見方が変わったよ」“元世界ランク1位”人気ゴルファーの告白
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2024/08/10 11:04
柔道・阿部詩の号泣。海外のトップアスリートから思わぬ反響があった
「全ての選手が全力を尽くして戦っている。本当にオリンピックの畳の上は素晴らしい舞台だなって」
個人戦で敗れた後、数日置いてから女子日本代表の増地克之監督に、「出場できるか?」と打診された阿部は「はい」と答えた。事前に選手はみんな団体戦の準備をしておくようにと言われていたから、そもそも心積もりだけはしていた。
「自分の中での葛藤はあったんですけど、団体戦には出ないと決断したら後悔するだろうと思いました。ここで一歩下がってしまうと今後の柔道人生に繋がらない。しっかり出場して意地でもチームに貢献できればなと思っていました」
絶望的な状況から必死に一歩を踏み出した結果として、戦い終えた阿部の手には銀メダルが残った。
メダルセレモニーで入場してきたとき、兄の一二三に肩を抱かれた阿部の表情にはようやく笑顔が戻っていた。個人戦で号泣した時に「ウタ! ウタ!」の大合唱で励ましてくれたシャンドマルス・アリーナの観客は、この日もセレモニーで阿部の名前が呼ばれると大きな歓声を送ってくれた。
「自分が踏み出した一歩というのは必ず何かに繋がると信じているので、その何かに繋がるといいなと思います」
そう語った阿部だが、全身全霊をかけてオリンピック連覇に挑んだ姿はすでに思わぬところに繋がっていた。
「彼女の涙を見て、オリンピックが分かった」
「昨日、テレビで柔道を見たんだ」
男子ゴルフのオーストラリア代表ジェイソン・デイは、阿部が個人戦で敗れた翌日にゴルフ会場となるル・ゴルフナショナルで公式会見に出席していた。
2015年に全米プロ選手権でメジャータイトルを手にし、世界ランキング1位も経験している人気ゴルファー。すでに生涯獲得賞金は6000万ドル(約89億円)を超えている。