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「ウタ、ウタ!」柔道・阿部詩の号泣…海外では予想外の反響「彼女の涙を見て、オリンピックの見方が変わったよ」“元世界ランク1位”人気ゴルファーの告白
posted2024/08/10 11:04
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
涙がかれたわけではなかった。敗戦の傷が癒えたわけでもなかった。しかし、彼女は畳の上に立っていた。
個人戦が終わって普通なら少しは体重が戻ってふっくらとしていてもよさそうなのに、その顔には生気はない。頬はげっそりとこけ、目にはクマができているように見えた。
8月3日に行われた柔道の混合団体。日本は初戦のスペイン戦で、最初の57kg級の試合に阿部詩を起用した。相手も同じ52kg級のアリアネ・トロソレルが出てくると見越しての判断だった。
ガッツポーズも笑顔もなかった
試合に出場できているというだけで、悔しさに踏ん切りをつけ、気持ちを立て直したと考えるのは早計だ。個人戦での衝撃的な敗戦がわずか6日前の出来事。ウズベキスタンのディヨラ・ケルディヨロワに谷落で一本を奪われ、連覇への挑戦はついえた。会場中に響き渡る大きな声で泣き崩れたその場所で何も思い出さないわけがない。
「どうしても負けた記憶がよみがえってきたけど、団体戦なのでみんなから頑張れと送り出されて心強かった」
円陣を組んで送り出された試合。まず開始24秒で指導をもらい、1分を過ぎてから谷落で技ありも奪われた。
「ポイントを取られてもあまり焦らず、自分の柔道を立て直せる自信はあった」
大腰でトロソレルを投げると主審の手が上がった。一本勝ちかと思いきや、映像確認で技ありに変更。しかし気落ちすることなく、勢いを増して攻めていく。最後は残り1秒、袖釣り込み腰で再び技ありを奪い、合わせ技一本で勝負を決めた。二番手の橋本壮市を激励してから畳を下りた。ガッツポーズや笑顔はまだなかった。
このスペイン戦で日本は思わぬ苦戦を強いられ、代表戦までもつれ込んで辛くも勝利した。阿部の挙げた一勝はチームにとっても大きかった。
「ウタ、ウタ!」再び大きな歓声があがった
その後は出番は回ってこなかったが、決勝のフランス戦で仲間たちが戦う姿にこう思ったという。