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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「森ちゃんが亡くなってから1年しんどかった」池田久美子が26歳で他界した親友に誓った五輪出場「おばあちゃんになっても砲丸を投げたいと…」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byJun Tsukida/AFLO SPORT
posted2024/08/09 11:03
何でも言い合える関係だった森さんを亡くした後、心に穴が空いた時間があったと語った池田久美子
井村さんは2013年に現役を引退。夫の俊雄さんとともにイムラアスリートアカデミーを設立し、子どもたちに運動の楽しさを伝えている。
第一線から退いた後も親友から感じ、学んだ教訓が、様々なシーンで活きているという。
「陸上の指導をしていますが、今年、鈴鹿(三重)から鎌倉(神奈川)でも教えるようになったんです。子供も親御さんもはじめましての方々ばかり。初対面の方に対しては、どうしてもお互いにいいところを見せようとしますが、それでは疲れてしまいます。そこで森ちゃんから学んだ、“背伸びをしないで、今の自分を素直に!”で、来てくださる親御さんも子供たちも純粋に楽しめる環境が作れるようになりました」
姿はなくなっても、魂はいつまでも井村さんの中で生き続けている。
8月9日で森さんが亡くなって18年になる。
2004年に更新した18m22は現在もなお日本記録として残っている。しかも、アテネ五輪以降、女子砲丸投げは五輪に派遣されていない。
森さんはそんな現状を天国でどう見ているだろうか。
「優しい物腰だけど、森ちゃんの話には芯がありました。女性で海外経験している人は少ないので、今、森ちゃんがいたらコーチ兼選手で活躍していたかもしれません。今ごろ、向こうで教えたくてうずうずしているんじゃないかな。いや、投げれなくなるまで選手で続けていたかもしれませんね」
30歳、40歳まで競技を続けたい、おばあちゃんになっても砲丸を投げたいと熱く語っていた森さんも、きっと北口のパリでの戦いを楽しみにしているだろう。
そして北口に負けじと今も大好きな砲丸投げを楽しみ、天国でストイックに向き合っているに違いない。