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競泳・鈴木聡美はなぜ競泳界の「常識を覆せる」のか…東京五輪は代表落ち、恩師も「不器用」「才能がない」と認める33歳がパリの次に目指すもの
posted2024/08/03 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Ryosuke Menju/JMPA
あの輝きから、12年。大舞台で、再び輝いた。
「自分に拍手ですね」
8月1日、パリ五輪競泳女子200m平泳ぎ決勝。鈴木聡美は4位入賞を果たした。
今大会の最初の種目、100mは全体12位で決勝に進めず、迎えた200mでは予選から勝ち上がり決勝に臨む。不安は大きかった。
「正直、怖かったです。200mはどうしても苦手意識が強くて、たくさん練習してきたので自信もっていいはずなのに、心細さとか出て」
それに打ち克ったことだけが「自分に拍手」なのではない。
「自分に拍手」の理由
パリ五輪は、彼女にとって2016年リオデジャネイロ大会から8年ぶりの大舞台だ。決勝レースに出たのは2012年ロンドン以来、12年ぶり。
しかも日本競泳史上最年長の33歳での出場である。
「常識を覆したい」
その言葉をいくつもの意味で実践してみせたからこその「自分に拍手」だった。
鈴木は2012年ロンドン五輪で100m銅、200m銀、メドレーリレー銅と3つのメダルを手にした。個人種目での複数メダル獲得は日本女子初、同一大会3つのメダルも日本女子初であった。
その後、不振に陥ったが乗り越えて、リオデジャネイロの個人種目では100mに出場。予選敗退に終わる。巻き返しを図ったが、東京五輪は選考会で結果を残せず代表入りを果たせなかった。
30歳を迎えていた。一時期より競技寿命が長くなってきているとはいえ、退いて不思議はない年齢に達していた。引退が脳裏をよぎるのも不思議はなかった。だがコーチをはじめ支える人々は「まだできる」「伸びる」と励ました。