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「朝倉未来の時代」が終わった瞬間…平本蓮26歳“予想をはるかに超えた”急成長の理由とは? 炎上連発も「とことん格闘技に殉じる」純情な正体
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2024/07/30 17:34
呆然とする朝倉未来にリング上で声をかける平本蓮。わずか138秒でのTKO、「朝倉未来の時代」が終わりを告げた瞬間だった
それは20年前のPRIDEが事実上のヘビー級世界一を決める試合だったのに対し、今回の朝倉vs.平本は「日本一を決める試合でさえなかった」ということだ。
2020年の大晦日から試合前までの両者のMMAでの戦績を振り返ってみても、朝倉は4勝2敗、平本は3勝3敗と、決して連戦連勝のレコードを残していたわけではない。
「朝倉有利」の声が多かった理由
しかしながら、彼らがSNSを通じて発信するメッセージには業界のパワーバランスを動かせるだけの絶大な影響力がある。格闘技界において、朝倉はSNSをセルフブランディングのために最大限に駆使するノウハウを確立したパイオニアといっていいだろう。そうでなければ、彼が旗揚げから深く関わるBreakingDownが社会現象になるほどの人気イベントになるはずがない。
一方の平本も、SNSを武器にのし上がってきたファイターだ。ニックネームは“美しきドブネズミ”。一見矛盾したネーミングながら、オンリーワンともいえる現在の平本のスタンスをうまく表現しているのではないか。6歳年上の朝倉に対して当初は憧れを抱いていたが、MMA転向を表明した後はリアルとSNSを行き来しながら挑発を繰り返し、直接対決を要求するようになる。両者のやりとりは2020年から始まっているので、実に4年越しの因縁対決が実現したわけだ。
RIZINのタイトルマッチではないが、その集客力はタイトルマッチ以上。だからこそRIZINは“ラストマン・スタンディング・ベルト”なる新たなベルトを用意した。しかも試合時間は通常の5分3ラウンドではなく、5分5ラウンド制となり、ジャッジもラウンドごとのマストシステムという特別仕様で実施されることになった。いみじくも、榊原CEOはこんな発言をしている。
「この試合は今のRIZINの最強を決めるものではないが、思いの詰まった特別な試合」
巷の予想は「朝倉有利」という声が圧倒的に多かった。ABEMAが配信した番組で、榊原CEOは「予想は8対2くらい」とシビアに断言している。その根拠はMMAのキャリアの違い、特にグラウンドの技術の差だった。