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「3年間、しんどかった」阿部一二三を圧勝劇の金に導いたのは…最強ライバルの存在、井上尚弥から得たもの、詩にかけた言葉
posted2024/07/29 18:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
圧巻だった。
男子柔道66kg級の阿部一二三は、圧倒的な柔道で、堂々、五輪連覇を達成した。
阿部にとっての初戦となった2回戦でベンツェ・ポングラツ(ハンガリー)、準々決勝ではヌラリ・エモマリ(タジキスタン)から一本勝ちをおさめる。
準決勝は世界ランキング1位のモルドバのデニス・ビエルと対戦。ゴールデンスコアに払い腰で技ありを奪い決勝進出を決めると、決勝ではウィリアン・リマ(ブラジル)から技ありを奪い、すぐさま袖釣り込み腰で合わせ技一本。得意とする担ぎ技に足技も交え、受けでも強さを発揮。敗れる要素を微塵も感じさせなかった。
東京五輪で優勝して以来、パリを迎えるまで無敗を誇った。その成績が物語るように、大会で見せる柔道に一切の曇りはなかった。大会のたびに語る言葉もただただ、前を見据えた強い気持ちが込められていた。
だが、連覇を果たした阿部は言う。
「重圧だったりプレッシャーは東京のときよりあったし、正直、3年間苦しい思いの方が多かったです」
「しんどくて、練習してもしても不安で」
いちばん苦しかったのは「練習です」と言う。
「練習とトレーニングがしんどかったし、してもしても不安で、『大丈夫かな』『強くなってるのかな』と思っていました」