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「朝倉未来の時代」が終わった瞬間…平本蓮26歳“予想をはるかに超えた”急成長の理由とは? 炎上連発も「とことん格闘技に殉じる」純情な正体
posted2024/07/30 17:34
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
時代の寵児に二言はなかった。
7月28日に開催された『超RIZIN.3』のメインイベントで、平本蓮に衝撃の1ラウンドTKO負けを喫した翌日。朝倉未来は自身のSNSで「自分が戦うのは一旦終わりにします」と引退を表明した。
「このまま終わってほしくない」引退撤回を求める声も…
3月に行われた発表記者会見で、朝倉は「もし平本に負けたら、格闘技人生引退します」と宣言していたが、前言を撤回することはなかった。平本との一戦に向け、一緒に練習することもあった那須川天心はSNSで「引退しましょう 1、2年だけ」と期間限定の休養を促したが、いまのところ朝倉からの返答は公にはない。
闘いが終われば、ノーサイド。試合後、平本は「俺も引退撤回したので、あなたも撤回してください」と懇願したが、引退表明の文面を見るかぎり、現時点で翻意することは考えにくい。
大会後の総括で、RIZINの榊原信行CEOは「僕がどれだけJTT(ジャパントップチーム)に通って口説いても引退を取り消せる気持ちにできるか分からないけど、このまま終わってほしくない」と引き止めに尽力する意欲を示した。だが、アクションを起こすにもある程度のインターバルが必要だろう。朝倉とて、軽はずみな気持ちで進退を口にしたわけではないのだから。
4万8000人が熱狂…PRIDE時代との決定的な違いとは
ロープにもたれかかった朝倉の元に平本が訪れ、宿敵の右手を両手でガッチリと握った瞬間、筆者は日本の格闘技が新たなフェーズへと移行したような気がしてならなかった。
お膳立ては整っていた。2009年大晦日の魔裟斗の引退試合以来、格闘技イベントでは実に15年ぶりとなるさいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョン。観客席は4万8117人(主催者発表)の大観衆で埋め尽くされた。試合開始のゴングが打ち鳴らされると、両者へのコールが重なり合い、言葉にならない怒号となって場内を包み込んだ。
ビッグマッチならではの醍醐味を目の当たりにしたとき、脳裏に浮かんだ大会がある。ちょうど20年前の2004年8月、同所で行なわれたエメリヤーエンコ・ヒョードルvs.アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラの『PRIDE GRANDPRIX 2004決勝戦』だ。あの大会も4万7000人を超えるファンが集結し、盛り上がりが凄まじかった。しかし、観客動員数ではほぼイーブンでも、今回とは決定的な違いがある。