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「朝倉未来の時代」が終わった瞬間…平本蓮26歳“予想をはるかに超えた”急成長の理由とは? 炎上連発も「とことん格闘技に殉じる」純情な正体
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2024/07/30 17:34
呆然とする朝倉未来にリング上で声をかける平本蓮。わずか138秒でのTKO、「朝倉未来の時代」が終わりを告げた瞬間だった
「寝技で平本を塩漬けにする展開が長くなれば、朝倉有利は動かない」
そんな声も耳にした。各ラウンドともマストシステムで採点されるのであれば、朝倉が一層有利になるはずだ――MMAの性質を理解した選手や関係者の事前予想には、一定の説得力があるように思えた。
朝倉未来が反応できなかった「平本蓮のステップ」
しかし、予想はあくまで予想に過ぎない。いざ試合が始まってみると、想像をはるかに上回る衝撃的な現実が待ち受けていた。時間にしてわずか138秒、平本はスタンドの打撃の攻防だけでケリをつけたのだ。
白眉は平本が左右にステップした刹那、思い切り踏み込み左フックをクリーンヒットさせたシーンだろう。平本はよろめく朝倉に左右の連打を打ち込み、とどめのパウンドにつなげた。一連のムーブに、朝倉はほとんど反応できていないように見えた。
平本が初めて見せた、このステップはいったい何なのか。
「自分で練習していて、“待ちのスタイル”になってしまっていたのは理解していました。いろいろ技術を吸収すると後手に回ってしまうんです。それで手塚(裕之)さんに堀口(恭司)選手が空手をやっている道場の二瓶卓郎さんを紹介してもらいました」
二瓶氏は堀口の師である故・二瓶弘宇氏の長男。平本は二瓶氏の元に通って伝統派空手のエッセンスを習得し、それを朝倉戦で実際に使ったということだ。
「それがハマった。ちょっと堀口さん意識のステップです」
もともと幼少時からキックボクシングを習い、2014年には16歳でK-1甲子園優勝を果たした。プロ転向後の2018年には元K-1王者の強豪ゲーオ・ウィラサクレックから2度もダウンを奪い、価値あるKO勝利を収めている。
MMA転向後は武術性を重視する剛毅會の岩崎達也氏に師事し、そこで学んだ動きを格闘技の軸としていることも大きい。「伝統派空手がプラスになったのか」と筆者が質すと、平本は「剛毅會の空手やキックボクシングに伝統派空手をプラスした、まあ平本流ですね」と説明した。