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なぜ田中希実(24歳)は世界の舞台で「勝負の場」に残れるのか? コーチを務める父が世界陸上で感じた“日本最速ランナー”「成長の兆し」 

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田中健智

田中健智Kenji Tanaka

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posted2024/08/02 06:02

なぜ田中希実(24歳)は世界の舞台で「勝負の場」に残れるのか? コーチを務める父が世界陸上で感じた“日本最速ランナー”「成長の兆し」<Number Web> photograph by Getty Images

ブダペスト世界陸上5000mで15秒近く日本記録を更新し8位入賞した田中希実。なぜ彼女は世界の舞台でラストの「勝負の場」に残れるのだろうか

 残り300mで10番手、200mで入賞圏内に、100mで6番手……最後の最後に抜かれながらも、なんとか8位を守り切り、この種目で26年ぶりの入賞を果たすことができた。

 2023年は特に、5000mのレースを減らし、1500mへの出場を重ねたシーズンだった。それも、ただレースに出場するだけでなく、中盤からビルドアップにしたり、ラスト1、2周のラップを上げたり、色々なパターンを試して、彼女の“引き出し”を増やすことを意識してきた。5000mは今季3大会目だったが、1500mとトータルで取り組んできたからこそ、ペース変動にも対応できたのだろう。

日本人が世界の舞台で「勝負の場」に残るには?

 世界の舞台で、日本人が決勝のラスト1周まで、しっかり勝負の場に残る――。ブダペストは、これまでの複数種目出場などの取り組みが一つとなり、私たちの理想とするところの「片りん」が見えた希望のレースだった。

 そして同時に、彼女の精神的な成長の「兆し」を感じる9日間でもあった。それはレース後、彼女が取材陣に対して発した「私一人じゃここまで来られなかった」という周囲への感謝の一言にも表れていた。

 私の性格を引き継いでしまったのか、希実は「誰かのため」や「周りのおかげ」と思っていても、なかなか口に出して言いたがらない。口先だけになってしまうのが嫌で、相手に伝わらなくても、自分が心の中で感謝していれば良いと思ってきたのだろう。だが、ブダペストでの衝突を経て、自分の一言で周りが救われるし、「一人では戦えない」ということを再確認できたはずだ。

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「『田中希実』を演じるな」…24歳“日本最強女子ランナー”にコーチの父がかけた言葉の意味は? 東京五輪後は「緊張感に支配されていた」

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