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格闘技PRESSBACK NUMBER
「キレてなーいで一世風靡」マイク・ベルナルド“あの伝説KO”を覚えているか?「最強のアーツが吹っ飛んだ…」カメラマンが感じた“パンチの風圧”
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2024/07/28 11:00
すさまじいパンチ力を誇ったマイク・ベルナルド。K-1全盛期に「四天王」のひとりとして活躍した
アンディ・フグ戦の番狂わせ「フロックか? 実力か?」
だが、ベルナルドの日本でのデビュー戦はそんな評価を覆すものとなった。1ラウンドは左のカウンターパンチでダウンし、フグの猛攻を受けるが、ゴングに救われてラウンド終了。このとき私が照準を合わせていたのは、「フグがKOするシーンを撮り逃さない」こと、それだけだった。フグは変則的な蹴りをするので、次のラウンドは注意深くその動きに呼吸を合わせた。
しかし、両者には体格差があり、次第にフグが攻めあぐねるシーンが増えてきた。決着は3ラウンドだった。ベルナルドの右ミドルからの左フックで、フグが吹っ飛ぶようにダウン。その後もパンチの連打で2度目のダウンを奪い、最後はコーナーにフグを釘付けにして一方的なパンチを浴びせたところで、レフェリーが試合を止めた。
ベルナルドの勝利は番狂わせと言えるものだったが、彼の強さを懐疑的に見る向きもあった。このアップセットは対戦相手がフグだったからこそ起きたのではないか、と。フグは前年の同グランプリの1回戦で伏兵といえるパトリック・スミスに19秒でKO負けを喫するなど、初対戦の相手に弱いイメージがあった(スミスとの5カ月後の再戦では56秒で借りを返している)。ベルナルドも“初見”ゆえにフグに勝てたのでは、と思われていたのだ。
その2カ月後、開幕戦を勝ち上がった8名によるワンデイトーナメントが行われた。ベルナルドはスタン・ザ・マンのローキックに苦しみながらもハイキックでKO勝利。準決勝は前年に南アフリカで戦い、K-1デビューのきっかけをつかんだバンナとの再戦だった。
ベルナルドはパンチに活路を見出そうとしたが、距離を潰され、左足を徹底的に狙われた。最後は左太ももへの蹴りを受けて、踏ん張ることができずにKO負け。当時のキック界の風潮として、「ローキックで倒れる選手は一流の選手とは言えない」という空気があった。ローキックの防御はプロとしての基本技術であり、それが出来ていないベルナルドの強さは依然として未知数のままだった。