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格闘技PRESSBACK NUMBER
「キレてなーいで一世風靡」マイク・ベルナルド“あの伝説KO”を覚えているか?「最強のアーツが吹っ飛んだ…」カメラマンが感じた“パンチの風圧”
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2024/07/28 11:00
すさまじいパンチ力を誇ったマイク・ベルナルド。K-1全盛期に「四天王」のひとりとして活躍した
「アーツが真横に吹っ飛んだ…」K-1史上に残る伝説のKO
K-1デビューから半年後にあたる1995年9月に組まれたフグとの再戦。ベルナルドは豪快な右ストレート一発でフグを返り討ちにした。ここにきてようやく、誰もがベルナルドを“本物”だと認識するようになった。
年末にはグランプリ2連覇中のピーター・アーツと初対戦。当時25歳のアーツはキックルールで18連勝中、その強さゆえに“20世紀最強の暴君”と称されるほど盤石な強さを誇っていた。
試合開始から40秒、アーツの右フックが後頭部を直撃し、ベルナルドは秒殺KO負けを喫する。ルール上、後頭部へのパンチは反則なのだが、主催者は故意ではなく一連の攻撃の流れの中で当たったと判断。結果が覆ることはなく、ベルナルドは悔し涙を流した。
だが翌年、絶好のリベンジの機会が訪れる。
1996年5月6日の『K-1 GRAND PRIX '96 決勝戦』は私を含めて、ファンや関係者にとって忘れられない大会となった。「絶対王者のアーツに勝てる選手はいない」――誰もがそう考えていた。焦点はアーツがどのように勝つかに絞られていたが、トーナメント初戦で暴君の対角線上に立ったのは、名誉挽回に燃える南アフリカの剛腕だった。
優勝するには1日で3試合の勝利が必要な過酷なトーナメントだ。少しでも早く相手を倒し準決勝の試合に備えたいアーツは、スタートから積極的に攻め込む。だが、その焦りを逆手に取るように、1ラウンド終了間際、ベルナルドのカウンターが顔面にヒットした。アーツがふらつく。ラウンド終了を告げるゴングが聞こえないほどの大歓声と悲鳴が場内に響き渡った。
ベルナルドはパンチに手ごたえを感じたのか、2ラウンド序盤からラッシュをかけてダウンを奪い、最終ラウンドへ。後がないアーツは距離を詰めて前に出る。待ち構えていたベルナルドが渾身の左フックを打ち抜くと、アーツは真横に飛ぶようにマットに沈んだ。その瞬間、1万7000人を超える観客は総立ちとなり、横浜アリーナが揺れた。止まない拍手と「ベルナルドコール」で観客は勝利を称えた。