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「キーマンは関田誠大」柳田将洋が語る“男子バレー52年ぶり五輪メダル”への可能性「判断力は世界一。攻撃陣を100%以上生かせるセッター」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byVolleyball World
posted2024/07/27 06:00
日本代表の命運を握っているセッター関田誠大(30歳)。柳田とは東洋高校時代、ともに春高バレー優勝を果たした間柄でもある
「やはりどうしても彼の存在、役割はかなり大きくなっているなと感じますね。彼がセットすることでいろんな攻撃の幅が生まれる。逆に言うと彼の負担も大きいと思う。彼自身、負担だとは思っていないと思うんですけど。日本のバレーボールが彼によって確立されている部分は確かにあるので、関田選手がどれだけいつも通りのプレーができるかもカギになると思います。
関田選手には今の攻撃陣を100%、それ以上にも生かす力がある。攻撃面の順応性や判断能力を今、彼以上に体現できているセッターは世界でもいないんじゃないか。ここ1本という場面で、一番ないような選択肢に彼は上げたりする。そうなると相手もマークできません」
「今の日本は理想的な状況になっている」
関田の順応性を象徴する場面として柳田が挙げた中の一つが、今年のネーションズリーグのイラン戦で、石川がブロックに跳んだあと、すぐに下がってBクイックのような速いコンビを決めたシーンだ。速いトスを要求するサインはあるが、スパイカーがサインをコールしなくても、関田の視界に入っていればピタリとトスが来るのだという。
「ああいうシーンは僕もジェイテクトで(2022-23シーズンに)一緒にやっている時に何度もありましたけど、わざわざ呼ばなくても、ある程度適当に入るとトスが来る(笑)。普通に速く入れば、彼は僕のことチラッと見て、ピッと上げてくれる。僕が踏み込んだスピードで、僕の打ちやすい高さに。かなり楽ですよね。
あのイラン戦の石川選手もたぶん、助走があまりできない状況で、どうやって活路を見出すかを瞬時に判断し、そこが関田選手のIQとしっかり合致して、ああいうコンビが生まれた。そういう判断が常にされていると思う。この状況ならこういうトスを上げれば打てるだろう、なおかつブロックの枚数を少なくするには、というのを自然とやれているんだと思います」
しかもそうしたあうんの呼吸が、長くコンビを組んできた石川だけでなく、今年のネーションズリーグ終盤に左足の怪我で離脱した高橋藍に代わって先発出場した大塚達宣(大阪ブルテオン)との間にもできていた。
「練習でのレベルをどれだけ高められるかというのは重要ですが、今の日本は理想的な状況になっていると思う。海外を経験した選手もいれば、下から突き上げて入ってくる若手もいて。いろんな世代が相まって、レベルの高い練習が常にできている。
関田大塚の新しい関係性にしても、常に強い日本とお互いやれているからレベルが上がりやすい。今、世界で2位のチーム同士が普段の練習で対峙しているわけですから。お互いを打ち崩すためにどうすべきか考える中で、自然と新しい発想や関係性が生まれても不思議じゃないですよね」
そう言って、日本代表の好循環に柳田はうなずいた。
(第2回に続く)