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「中谷潤人が井上尚弥を倒しても驚きはない」圧巻ボティ一撃KOに英国人記者も言葉失う「私の中では尚弥vs中谷こそが最高のマッチアップ」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2024/07/22 17:02

「中谷潤人が井上尚弥を倒しても驚きはない」圧巻ボティ一撃KOに英国人記者も言葉失う「私の中では尚弥vs中谷こそが最高のマッチアップ」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

ビンセント・アスタラビオを一撃でKOした中谷潤人(26歳)

 じっくり見ようと腰を落ち着けようとしたところで、もう試合は終わってしまいました。もちろん何が起こるかわからないことは理解していたので、目を離したわけではありません。ただ、いかに上昇一途の中谷とはいえ、オープニングラウンドにボディへのワンパンチで倒してしまうなんて誰が考えたでしょう?

 特に今戦は中谷にとって、バンタム級でまだ2戦目に過ぎないのです。2月の前戦ではアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)を6回で沈めたのに続き、これで新しい階級で2試合連続の前半KO勝利になります。井上尚弥同様、階級を上げてもその強烈なパンチングパワーを保っていると見るのが妥当なのでしょう。

 これも井上尚弥と同じく、中谷には技術面でも文句のつけようがありません。サウスポースタンスを有効に使い、懐が深く、質の高いジャブも持っています。距離の掴み方にも優れており、おかげで対戦相手は自分の射程圏内でほとんどパンチが出せないように見えます。無理に飛び込めば右フックか左ストレートのカウンターが待ち受けているのですから、思い切って攻められないのも当然なのでしょう。

 自ら攻めることができ、カウンターもうまい中谷は“コンプリートファイター(完成された選手)”という呼称にふさわしいボクサー。アストロラビオとの試合ではそれほど多くのツールを見せる必要すらなく、格の違いを見せつけたサウスポーがとてつもない選手であることはもう疑いの余地もありません。

半年後にはバンタム級で4団体統一か

 ここで指名戦をクリアした中谷は今後、統一戦に乗り出すのでしょう。個人的な意見を言っておくと、私は中谷ならその気になれば、せいぜい6カ月でバンタム級の4団体統一を完成させてしまうのではないかと思っています。

 他の王者たちももちろん優れたボクサーではあります。WBA王者・井上拓真(大橋)はここしばらくのボクシング界では最も向上した選手でしょう。エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に勝ったIBF王者・西田凌佑(六島)も勢いにのっているはずです。それでも、この2人に中谷を止められるとは思えません。ジェイソン・マロニー(オーストラリア)に判定勝ちでWBO新王者になった武居由樹(大橋)は非常にアグレッシブなのが魅力ですが、中谷にはおあつらえむきの相手のように思えます。

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