そんな中で希望する統一戦のカードを選ぶなら、やはり中谷対井上拓真戦です。拓真はトレーナーの父とともに、中谷の仕事を可能な限り難しくさせるゲームプランを持って臨んでくるに違いありません。それでも明らかに中谷が優位であり、拓真はどれだけ持ち堪えられるか。簡単な試合にはならないかもしれませんが、十分なパンチングパワーがなければ中谷を止めるのは難しいというのが私の意見です。

　拓真の兄、井上尚弥と中谷の激突は瞬く間に世界のボクシングファンから最高級に待望されるカードになった印象があります。ジャーボンテイ・“タンク”・デービス（アメリカ）対シャクール・スティーブンソン（アメリカ）もいいカードですが、 私の中では井上尚弥対中谷こそが最高のマッチアップ。井上尚弥はいずれフェザー級に上げるはずですが、その前の来年中にも中谷戦を組むことは可能に思えます。

　ハイレベルのスキルと爆発的なパワーを備えた無敗王者同士の激突なのですから、繰り返しますが、これ以上に上質な対戦を想像するのは容易ではありません。日本のリングは盛り上がるでしょうし、前回も話した通り、私も今からできる限り日本への渡航費を貯めておかなければいけません（笑）。

「モンスターを倒す相手が中谷なら…」

　最後に一足早い井上尚弥対中谷戦の予想に思いを巡らせておくと……少なくとも今の時点で、私は井上尚弥の勝利を予測せずにはいられません。“モンスター”の敗北は予想できないのです。それでも井上尚弥にとって、大変な試合になるのかもしれません。

©︎Hiroaki Yamaguchi

　モンスターが誰かに敗れることがあったら、本来であれば世界中のボクシングファンがショックを受け、私も愕然とするでしょう。ただ、その相手が中谷なら、ボクシングを詳しく知っている人であればもうそこまで驚きはしないかもしれません。中谷はそれほど素晴らしいボクサー。これほどの強豪王者が激突するスーパーファイトが、無事に実現することを私も心から願っています。　

《後編／那須川天心に続く》