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ドイツ21点差、セルビア19点差の“完敗”…それでもバスケ日本代表に富樫勇樹(30歳)がいる信頼感「声出しが恥ずかし」かった男はなぜ変わったか 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2024/07/22 17:00

ドイツ21点差、セルビア19点差の“完敗”…それでもバスケ日本代表に富樫勇樹(30歳)がいる信頼感「声出しが恥ずかし」かった男はなぜ変わったか<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

男子バスケ日本代表のキャプテンを務める富樫勇樹。強豪ひしめくパリ五輪の舞台で、どんなプレーを見せてくれるだろうか

 富樫は、所属する千葉ジェッツでは代表で大役を任される前年にプロ入り後初めてキャプテンを任されていた。

 しかし、当時は気乗りしていなかった。それを示す2つのエピソードがある。

 まず、一度は依頼を断っている。ただ、当時のジェッツを率いていた大野篤史HCから「既存のキャプテン像に合わせる必要はないから」と言われ、ようやく引き受けたほどだった。

当初は「声を出す役割」を固辞

 もうひとつが、練習や試合の際に「声を出す役割」を固辞したという事実だ。当時、キャプテン就任にあたってこんな条件をつけていた。

「練習や試合前の(円陣での)声出しは恥ずかしいので、その仕事を(ムードメーカーだった)田口成浩にやってもらえるなら……」

 実はそういう場面で声を出すのが苦手なのは、その後も変わっていない。2022年夏にジェッツのHCにジョン・パトリックが就任してからのこと。引き続きキャプテンを任されたのだが、新指揮官の“仕事ぶり”を誰よりも喜んでいたのが富樫だった。

「ジョンさんは自ら(声出しを)やってくれるので、めちゃくちゃ助かりますよ。最高です!」

 そんな富樫だが、2021年の東京オリンピック後にホーバスHCから大役を打診されたときには、断らなかった。その理由はなぜなのか。

 東京オリンピックが3戦全敗に終わったことで、少なくない選手が代表活動を続ける気力を見せず、ホーバスHCは就任早々にチームの若返りを図らざるをえなかった。そんな状況を引き合いに、富樫はこう話していた。

「『キャプテンをやってほしい』と言われたときに、(自身より年上の選手は)右を見たら比江島、左を見たら張本しかいなくて(※2人は天然キャラとして有名)、あとは自分より若い選手。あの2人を見たらもう、仕方がないなと思いました。『頑張ります』としか言えなかったです。これ、ちゃんと書いておいてくださいね!」

 ただ、半分はジョークだろう。引き受けた理由についての本音を明かしたことがある。

「トムさんは自分の性格をわかってくれた上で、『チームと一緒になって成長していこう』という話でしたから。そこまで言われたら、引き受けないのはありえないことかなと」

【次ページ】 苦しい時に口を開く選手に

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