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ドイツ21点差、セルビア19点差の“完敗”…それでもバスケ日本代表に富樫勇樹(30歳)がいる信頼感「声出しが恥ずかし」かった男はなぜ変わったか
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/07/22 17:00
男子バスケ日本代表のキャプテンを務める富樫勇樹。強豪ひしめくパリ五輪の舞台で、どんなプレーを見せてくれるだろうか
実は、ホーバスHCからはこんな理由とともに、キャプテンを打診されていた。
「ユウキが声を出してチームを引っ張るタイプではないことは、女子のHCを僕が務めてたときから感じていたよ。ただ、ユウキには、他の選手にはない経験がある。それにキャプテンになれば今までとは違う視点からチームを見ることになる。それはユウキの成長に必ずつながるから。そしてユウキの成長は、チームの成長につながる。一緒に成長していこうよ!」
そして、ホーバスの狙いは、まさに的中した。富樫は変わった。
6月に公開された昨年のバスケW杯のドキュメンタリー映画『BELIEVE』のなかで、W杯前の合宿期間からの2カ月間について富樫自身がこう総括している。
「少しでもチームが良い方向に自信をもってプレーできるようにと、人生で一番考えながら過ごした2カ月だったかなと思います」
苦しい時に口を開く選手に
彼の変化で注目すべきなのは、以前より声を出すようになったということだけではない。
苦しい時に口を開く選手になったところに、大きな意味がある。
昨年のW杯では初戦のドイツとの試合後、3戦目のオーストラリア戦後、いずれも負けた試合直後のロッカールームでチームメイトの前で、彼らを鼓舞するようなスピーチをした。そして、その次の試合で日本は勝利をつかんだ。
序盤から劣勢が続いていた、4試合目のベネズエラ戦でのこと。点差が縮まらない状況が続いていた第4Qに入る直前、富樫がチームに向かって、大きな声で鼓舞した。
「エブリ・ルーズボール!」
「全てのルーズボールを大切にしていけ」という意味のメッセージだ。彼は苦しいときほど、積極的に、強く声を出すようになった。
前述したとおり、オリンピックは12カ国しか出場できない。32カ国も参加できるW杯とは比べものにならないほどのレベルにある。だから、パリオリンピックでも苦しい時間ばかりだろう。そのときに、キャプテンの富樫の真価は問われるのだ。
<次回(比江島慎編)へつづく>