「（歩き始めて）7分くらいしか経ってないよ！」

　レッドカーペットのようなイベントは日本では珍しい。大勢のファンに、世界のメディアに、無数のカメラに囲まれながら、花道を歩く。振る舞い方もわからないだろうし、何より照れもあるはずだ。その意味ではド派手な衣装を着て、ゆっくり歩きながら、長時間サインに応じる“メジャーの後輩”エリー・デラクルーズの場馴れは群を抜いていたように思う。

試合前のレッドカーペットに登場した大谷翔平と真美子夫人。左前方にアイアトン通訳　©Getty Images

同じくレッドカーペットでのエリー・デラクルーズ。ピンクのセットアップでキメていた　©Getty Images

日本人ファンは少数…でも大谷への歓声は大きかった

　ファンの歓声は正直だ。かつてサイン盗み騒動禍のアストロズで主力だったカルロス・コレアには、オールスター試合前の呼名時に容赦ないブーイングが浴びせられた。あるいは地元レンジャーズの選手には球場が揺れるほどの喝采が注がれる。地元出身のウィットに対してもそうだった。そこへ行くと、テキサスまで駆けつけた日本人ファンは少数。ドジャースのユニフォームが目立って多いわけでもない。それでも大谷への歓声は地元選手に劣らず大きかった。

　大谷はホームランを打った。野球選手がファンに応えるうえで最も単純明快な方法である。プレーでも場を支配していた。

スリーランホームランを放った大谷翔平。テオスカー・ヘルナンデスが「ひまわりの種セレブレーション」で祝福　©Getty Images

　オールスターの出番を終えた後。会見場に姿を現した大谷はこんな言葉を残した。

「まあ、できれば（MVP）取りたい気持ちはもちろんありますけど。自分としては、終わった仕事なので。いい1日だったなと」

　質疑応答を済ませると素早く立ち上がる。そしてやはり、颯爽と去っていった。

＜前編から続く＞