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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「あれっ? 佐々木麟太郎だ」じつは“花巻東高の先輩”大谷翔平を見に来ていた…MLBオールスターのウラ側、日本人記者が見た「大谷の“目”が忘れられない」
posted2024/07/20 11:00
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph by
Getty Images
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「走らないでね!! いい!?」
アメリカ南部はテキサス州、アーリントンのグローブライフ・フィールド。地元球団、テキサス・レンジャーズが2020年から本拠地にしている野球場である。強烈な日差しが地面に突き刺さる最高気温38℃の屋外とは一転、球場内は涼しい。可動式の屋根と空調が取り付けられているのだ。
オールスターの試合前日、7月15日。ファンにとってのメインイベントはホームランダービー、メディアにとっての関心事はダービー前の出場選手会見である。フィールド上で選手ごとに机と椅子、マイクが用意され、記者は各選手のところへ回りながら質問ができる。時間は各リーグ45分。先にヤンキースのアーロン・ジャッジらがいるア・リーグ、つづいてナ・リーグの順で行われる。
ナ・リーグのターンになった。日米はもちろんスペイン語圏(中米)からも多く駆けつけたメディア陣に向けて、フィールド上に引かれた線より後ろに下がるように、というアナウンス指示が流れる。そして、ラインより10mほど内側に立つ男性スタッフが叫ぶ。
‘DON’T RUN, OKAY?’ ――走らないでね!! いい!?
明らかに大谷翔平のブースに向けた競争を意識した注意喚起だった。だがその口調には幾分の“人懐っこさ”が含まれており、威圧感はない。
14時半頃、ナ・リーグの取材開始を告げるアナウンスが流れる。最初は誰もが速歩き状態。そこから少しずつ、ほぼ走りの状態へと変わっていく。「走らないように」と叫んでいたあの男性スタッフは、川の流れに逆らう石のように、駆け抜ける記者陣の中央に立っている。さぞ怒っているのでは……と目をやると、「待ってました!」と言わんばかりの表情で、両手を上げて笑っているではないか。これがアメリカ版、“フリ”の文化か。
記者の目をジッと見つめる
会見場はナ・リーグでは大谷、今永昇太、エリー・デラクルーズに、ア・リーグではアーロン・ジャッジ、フアン・ソト、ボビー・ウィット・ジュニアのブースに多くの人が詰めかけていた。
とりわけ大谷のブースは圧倒的だった。取材は先に英語、つづいて日本語(日本人記者)の質問という順で進められた。そのため、英語による取材が終わった段階で通訳のウィル・アイアトン氏が席を外すと、海外記者も離れることが多い。球団が学んだ、最も効率的な取材の進め方なのかもしれない。