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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「パパは大谷君にホームラン打たれたことあるんだよ」大谷翔平に“日本で一番打たれた男”東明大貴の告白「次の日、僕は二軍に行きました」
posted2024/07/18 11:20
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Sankei Shimbun
体に刻みこまれた「大谷翔平と対峙した記憶」
頭で憶えていなくても、体が忘れていなかった。かつてオリックスの先発ローテーション投手として活躍した東明大貴の大谷翔平にまつわる「記憶」である。
東明はいま、不動産会社の営業マンとして東京で働いており、日本ハム時代の大谷と対戦したのは10年も前になる。
「ちょっと曖昧になっているところもあるのですが……」
苦笑いを浮かべながらも、やがて口調は熱を帯びていく。アーチを浴びたことが話題になったときだ。東明はその瞬間を思い出したのか、投げ終える動作を示し、顔をくるりと右にひねった。左ではなくて右。咄嗟に出た動きは自然だった。
東明は大谷にいつも顔の右へ、つまり球場の左中間に大きな打球を飛ばされていた。この方向への長打は若きスラッガーにとって好調の証だった。ユニフォームを脱いで4年が経つ。メジャーリーグ最強打者に上りつめた大谷に対峙した感覚は、本人すら自覚しないうちに体の深いところに刻みこまれていた。
“大谷翔平に打たれる自分の姿”をテレビで目にして…
東明自身が大谷にとって“特別な存在”なのだと気づいたのは数年前である。自宅のリビングでくつろいでいた夜、テレビでニュース番組のスポーツコーナーを見ていると、大谷が日本ハム時代に放ったすべてのホームラン映像が流れていた。ふと、あることが目についた。
画面には、白球をとらえる大谷とともに打たれる投手が映っていた。そのなかに自分の姿を見つけたのである。
「あ、俺が出てるな」
そう思ったのもつかの間、今度は札幌ドームのマウンドに立ちつくす自分の姿を見た。さらに少し時間が経つと、また背番号26の背中が現れるではないか……。
「俺は何本、打たれたんだろう……」